※2017年の営業に関してはこちら(2017年4月20日付の拙ブログ記事)をご覧ください。
※2016年の営業に関してはこちら(2016年4月21日付の拙ブログ記事)をご覧ください。
拙ブログでは珍しくタイムリーな記事を取り上げてみます。2008年に発生した岩手宮城内陸地震で甚大な被害を受けてしまった栗駒山麓の駒の湯温泉が、日帰り入浴施設として今年(2015年)10月に復活したという報を受け、仙台で所用があった翌日の今月中旬、現地へ向かうことにしました。
東北道の若柳金成インターから一般道へ下り、栗駒・岩ヶ崎(※)の市街地を抜け、県道42号線を栗駒山へ向かって走行します。途中の山々では紅葉がすでに色づきはじめていました。
(※)余談ですが、私の体の4分の1は栗駒・岩ヶ崎の血が流れています。
県道42号の終点であるいわかがみ平の手前には、上画像のような標識が立つ十字路があり、この角に駒の湯温泉の道標となる立て看板が設けられていましたので、これに従い十字路を右折します。
「くりこま荘」を通り過ぎてS字カーブを曲がり、谷の底へ坂を下ってゆきます。その途中で見晴らしの良いところがあったので、車を止めて栗駒山の方を眺めてみると、山は紅や黄色に染まっていました。しかし、その手前に広がる荒々しい更地が、地震による土石流の恐ろしさを物語っており、紅葉の美しさを素直に喜んでよいものか、複雑な心境に苛まれました。
罹災地跡の更地奥の山裾にたたずむ小屋が今回の目的地です。
途中で振り返ると、山が大規模に崩れて牙をむいた生々しい傷跡が露わになっていました。濁流に飲み込まれてしまった旧駒の湯温泉のニュース映像を思い出さずにはいられません。胸が痛みます。
道は途中から砂利道となり、その突き当たりに駐車場、そして受付小屋などが並んでいます。ネーム入りの法被を着たご主人と女性のお二人で来客を出迎えていらっしゃいました。
日帰り入浴営業は今年(2015年)の10月からですが、それ以前から土日祝に限って足湯が開設されており、この足湯は現在でも利用が可能です。
受付小屋の先には男女別の湯小屋が並んでおり、小屋の前には、2種類の幟がはためいていました。これらの幟はいずれも温泉ファンからの寄贈されたもの。ちなみに緑地の幟は拙ブログでもリンクさせていただいているTさんが作成なさったものです。
平成27年9月29日の日付が記されている保健所の「温泉利用許可済証」。営業開始のギリギリのタイミングで発行されたんですね。湯上がり後にいろいろとお話を伺いましたが、この許可を得るまで、ものすごい苦労が重ねられてきたんだそうです。
今回営業を復活させた湯小屋は旅館復活へ前進するための第一歩であり、まだ完成形には遠く及んでいないため、湯小屋は小ぢんまりとした仮設然としたものですが、それでも湯浴み客に景色を楽しんでもらいたいというご主人のお考えにより、浴室には大きな窓が設けられ、湯船に入りながらブナの美しい木立を眺めることができました。ご覧のようにお風呂場のキャパシティーが小さいため、週末などの混雑時には、入浴まで待ち時間が発生することがありますので、あらかじめご承知おきを。
総木造の湯船は4人サイズで、造りもしっかりしており、入り心地は抜群です。木工の湯口からはお湯が滔々と注がれており、惜しげもなくオーバーフローしていました。かつての駒の湯温泉をご存知の方ならこの湯口に見覚えがあるかもしれませんが、それもそのはず、今回の復活に際して、温泉ファンが保管していた旧浴室の画像を参考にし、大工さんに旧浴場と同形状のものを作ってもらったんだそうです。温泉ファンならではの視線や記録って、こんなところで役に立つんですね。
浴室内にはお湯&冷水の水栓が2組ある洗い場が設けられており、お湯のコックを開けると源泉のお湯が出てきます。一方、冷水は水道の水です。山ですから近くを流れる沢水を引けば良さそうなものですが、水質管理の都合や保健所の指導などにより、公共の水道を引かざるを得ず、その工事費用のため、予算が当初よりも大幅に膨れ上がってしまったそうです。保健所の指導でもう一つ大きな問題として営業再開の前に立ちはだかったのが、浴室内の硫化水素ガス濃度の問題。浴室内では換気扇が複数台回っており、また浴槽脇の低い位置にはルーバーが取り付けられ、山の緑を眺める大きなガラス窓も出窓になっていて、出っ張り部分には通風孔が設けられているのですが、これらは全て室内の硫化水素ガス濃度を規定以下に抑えるための措置です。それゆえ外気が入ってきやすく、ただでさえぬるいお湯が余計に冷めてしまうのですが、でもこうしないと営業の許可が下りないので、こればかりは致し方ありません。
お湯は加温加水循環消毒一切なしの完全掛け流し。源泉のお湯をそのまま浴槽へ注いでいます。ただ源泉における湧出温度が低く、湯船においては36~38℃であるため、熱いお風呂がお好きな方にはちょっと物足りないかもしれません。また上述のように常に換気しなければならないため、湯温はなおさら下がってしまいます。でもそんなぬる湯でも、じっくりと長湯をすれば不思議と体の芯までポカポカ温まり、実際に長湯した私は、湯上り後しばらく汗が止まりませんでした。ですから、このお風呂では是非時間を忘れてじっくりと浸かり続けることをお勧めします(ただし混雑時には適度な長湯でとどめておきましょう)。熱い風呂に短時間入るより、ぬるめのお湯に長い時間浸かった方が温浴効果が高まりますし、このくらいの温度の方が健康促進のためにははるかに良いのです。
お湯は無色透明ですが白い湯の花がチラホラと浮遊しています。湯面からはタマゴ臭と軟式テニスボール的ゴム臭を足して2で割ったような硫化水素臭がはっきりと漂っているほか、クレゾールを思わせるような刺激臭も混じって湯口から放たれていました。お湯を口に含むと明瞭なタマゴ味と石膏味、そして渋みを伴う苦味がしっかりと感じられ、特に苦さに関しては口腔内の粘膜にしばらく残ります。湯中ではサラスベと石膏由来の引っ掛かり浴感が混在して肌に伝わり、鮮度感は抜群です。ぬるいお湯ですので体への負担を気にすることなくじっくりと浸かっていられますし、硫黄による血管拡張効果のため、長湯すれば40℃未満のお湯とは思えないほどのしっかりとした温まりを実感できます。文句なしの名湯復活です。
上画像はオリジナルタオル(販売品)や、「駒の湯通信」、そして入浴客すべてに手渡される入湯証明書です(タオルの上に載っている小さなカードです)。
上述のように、湯上り後には営業再開に至るまでのお話をいろいろと伺い、資料類も見せてくださいました。おしゃべりの中で、この駒の湯の復活を心待ちにしながらも、その姿を見ることなくあの世へ旅立たれたブログ「づれづれ草」のぽちさんの話題に及んだのですが、実のところ、ぽちさんは今回の復活のはるか前に、生前になんと足湯で入浴を果たされていますから(ブログの記事でも固有名詞こそ出していませんが、そのことを記録なさっています)、私なんかよりもとっくの前に駒の湯のプリミティヴな姿をご存知だったわけです。彼女はいまごろきっと天国で今回の営業復活を喜んでいることでしょう。
お客さんが次々といらっしゃる中、受付小屋のお二人は、そんな思い出話や温泉談義などで私との長話にお付き合いくださいました。本当にありがとうございました。
最後に、土石流に飲み込まれた現場を見下ろす高台に設けられた慰霊碑で合掌。
せっかく栗駒までやってきたので、ついでにいわかがみ平の駐車場まで上がったのですが、その途中の道中で右の車窓を眺めたところ、ちょうど駒の湯温泉の真上に虹がかかっているのを発見。前途はまだまだ長いかと思いますが、来年もきっと着実に前進することでしょう。この虹がそんな幸先を予言しているかのようでした。
なお本年の駒の湯温泉の営業は11月3日まで。あと1週間ばかりしかありません(冬季はクローズします)。
この名湯に入りたい方は急いで栗駒の地へGO!!
駒の湯4号泉・5号泉混合泉
含硫黄-カルシウム-硫酸塩温泉(硫化水素型) 使用位置37.5℃ pH4.4 溶存物質1665.8mg/kg
Na+:29.4mg(5.26mval%), Mg++:27.2mg(9.21mval%), Ca++:405.2mg(83.14mval%),
Cl-:11.2mg(1.32mval%), S2O3–:0.1mg, HSO4-:1.5mg, SO4–:1142mg(98.39mval%),
H2SiO3:31.2mg, CO2:136.3mg, H2S:7.0mg,
宮城県栗原市栗駒沼倉耕英東88 地図
2015年の営業は10月1日から11月3日まで。営業状況や今後の予定等に関してはブログ「森の温泉~駒の湯温泉通信」でご確認ください。なお、いまのところ来年は4月末のオープンを予定しているそうです。
10:00~17:00(状況によってはこれより早く閉めることもあります) 水曜定休
400円
備品類なし(オリジナルタオルの販売あり)
私の好み:★★★
コメント
Unknown
おお!駒の湯さんに早くも行かれたのですね(^o^)v
我々なんぞはコミコミ状態が一段落してからと
遠慮してしまって・・・
出来れば年内に行ってみたいのですが
幟ですが、紺色のは、我々の拙いプログでリンクさせて
頂いてる「レンさん」が作成なさったものですね~
赤いバインダーに入った印刷した写真はありましたか?
あれは足湯でお邪魔した時に我々が提供させてもらいました
駒の湯復活はドキュメンタリー30分番組で東日本放送
にて放映されました
苦労話がそこでも、あの奥様の涙声も・・・
豪雪地帯なので来春までお休みですね
なんとか行けるといいなぁ~(^^ゞ
Unknown
おお!駒の湯さんに早くも行かれたのですね(^o^)v
我々なんぞはコミコミ状態が一段落してからと
遠慮してしまって・・・
出来れば年内に行ってみたいのですが
幟ですが、紺色のは、我々の拙いプログでリンクさせて
頂いてる「レンさん」が作成なさったものですね~
赤いバインダーに入った印刷した写真はありましたか?
あれは足湯でお邪魔した時に我々が提供させてもらいました
駒の湯復活はドキュメンタリー30分番組で東日本放送
にて放映されました
苦労話がそこでも、あの奥様の涙声も・・・
豪雪地帯なので来春までお休みですね
なんとか行けるといいなぁ~(^^ゞ
Unknown
おお!駒の湯さんに早くも行かれたのですね(^o^)v
我々なんぞはコミコミ状態が一段落してからと
遠慮してしまって・・・
出来れば年内に行ってみたいのですが
幟ですが、紺色のは、我々の拙いプログでリンクさせて
頂いてる「レンさん」が作成なさったものですね~
赤いバインダーに入った印刷した写真はありましたか?
あれは足湯でお邪魔した時に我々が提供させてもらいました
駒の湯復活はドキュメンタリー30分番組で東日本放送
にて放映されました
苦労話がそこでも、あの奥様の涙声も・・・
豪雪地帯なので来春までお休みですね
なんとか行けるといいなぁ~(^^ゞ
Unknown
Danさん、こんばんは。
先々週ですが、ちょうど所用で仙台へ行った翌日に時間ができたので、現地へ行ってみました。平日でしたが、栗駒山の紅葉シーズンだったためか、年配の方を中心に、次々にお客さんがやってきて、入浴室の空き待ちが発生していたほどです。
>紺の幟
はい、その話も現地で伺いました。赤いバインダーの写真も拝見しましたよv(^^)v ご夫婦と長い時間にわたってお話させていただいたのですが、その中で温泉マニアの先達のお名前が次々に出てきて、多くのファンが今回の復活を支えていることを実感させられました。
>ドキュメンタリー
KHBの系列であるテレ朝でも放送されましたので、私も拝見しました(HDDで録画もしてます)。番組で紹介されていたご苦労の過程は、ご夫婦からも
直接伺いましたので、映像を通じてそのお話が立体的になり、その様子を想像して胸が苦しくなったとともに、これからも何らかの形で応援していきたいという思いを改めて強くしました。奥貫薫の落ち着いたナレーションも良かったですね。
Unknown
Danさん、こんばんは。
先々週ですが、ちょうど所用で仙台へ行った翌日に時間ができたので、現地へ行ってみました。平日でしたが、栗駒山の紅葉シーズンだったためか、年配の方を中心に、次々にお客さんがやってきて、入浴室の空き待ちが発生していたほどです。
>紺の幟
はい、その話も現地で伺いました。赤いバインダーの写真も拝見しましたよv(^^)v ご夫婦と長い時間にわたってお話させていただいたのですが、その中で温泉マニアの先達のお名前が次々に出てきて、多くのファンが今回の復活を支えていることを実感させられました。
>ドキュメンタリー
KHBの系列であるテレ朝でも放送されましたので、私も拝見しました(HDDで録画もしてます)。番組で紹介されていたご苦労の過程は、ご夫婦からも
直接伺いましたので、映像を通じてそのお話が立体的になり、その様子を想像して胸が苦しくなったとともに、これからも何らかの形で応援していきたいという思いを改めて強くしました。奥貫薫の落ち着いたナレーションも良かったですね。
Unknown
Danさん、こんばんは。
先々週ですが、ちょうど所用で仙台へ行った翌日に時間ができたので、現地へ行ってみました。平日でしたが、栗駒山の紅葉シーズンだったためか、年配の方を中心に、次々にお客さんがやってきて、入浴室の空き待ちが発生していたほどです。
>紺の幟
はい、その話も現地で伺いました。赤いバインダーの写真も拝見しましたよv(^^)v ご夫婦と長い時間にわたってお話させていただいたのですが、その中で温泉マニアの先達のお名前が次々に出てきて、多くのファンが今回の復活を支えていることを実感させられました。
>ドキュメンタリー
KHBの系列であるテレ朝でも放送されましたので、私も拝見しました(HDDで録画もしてます)。番組で紹介されていたご苦労の過程は、ご夫婦からも
直接伺いましたので、映像を通じてそのお話が立体的になり、その様子を想像して胸が苦しくなったとともに、これからも何らかの形で応援していきたいという思いを改めて強くしました。奥貫薫の落ち着いたナレーションも良かったですね。