坂巻温泉旅館

長野県

今回からは、ちょうど一年前に巡った信州の温泉を連続して取り上げます。
1年前の古いネタで大変申し訳ございません。

 
昨年初夏に北アルプスで登山を楽しんだ日のこと。上高地の近くに湧く温泉「坂巻温泉旅館」で立ち寄り入浴してきました。玄関前にある水汲み場やお湯汲み場を見ながら、館内へとお邪魔します。

 
レトロな洋館を彷彿とさせるウッディな館内は温もりたっぷり。特に2階の階段ホールは、天井が高く、涼しくて静かです。話が前後しますが、私は湯上がりにはここでしばらく休憩させていただきました。

 
お宿自体は昭和初期の創業ですが、国道のトンネル工事に伴って昭和59年に現在の位置へ移ったんだそうです。内湯へ上がる階段付近には移転前のお宿や露天風呂を写した古い写真が展示飾されていました。いまは車で容易にアクセスできますが、当時はまさに秘湯だったのでしょうね。

●内湯

お宿には内湯と露天風呂がありますが、両者は離れており、一旦着替えて移動する必要があります。そこでまずは体の汗をしっかり落とすべく内湯へ向かうことにしました。フロント前の階段を上がって暖簾をくぐります。

 
脱衣室で着替えている時点で既に浴室からジャージャーとお湯が大量に流れる音が響いてくるので、否応なく期待してしまうのですが、扉を開けたら期待以上の湯量に思わず「すげぇ」と声を上げてしまいました。浴室のレイアウトとしては温泉旅館によくあるタイプで、岩を多用した浴室幅いっぱいに浴槽が据えられており、その手前側の洗い場にはシャワー付きカランが2基並んでいるのですが…

 

何よりもすごいのは、湯口から怒涛のように投入される大量のお湯。上述のように脱衣室はおろか廊下にまで響くほどドバドバと音を轟かせており、浴槽内のお湯は留まることなく流れを作っています。浴槽の大きさは2m×3m。溶岩のような黒い岩で縁取られ、槽内に張られたブルーのタイルが、無色透明のお湯のクリアさを際立たせていました。温度調整のために行われている加水がこの怒涛に加勢しているわけですが、それにしても川のごとく注がれては溢れてゆく大量のお湯には感動せずにいられません。浴室の床は常時洪水のような溢れ出しで洗われており、床なのに水深1cmはありました。お湯の鮮度を語るなんて野暮ですね。透明度の高いお湯ですが湯中には白い湯の華が浮遊しており、はっきりとしたタマゴ臭やタマゴ味が感じられるほか、弱い石膏のような味や硬水のような硬さ、正苦味泉のようなビターテイストが少々、軟式テニスボールのようなゴム風味、そして僅かながら刺激を有する噴気孔的な匂いも嗅ぎとれました。

●露天風呂
 
内湯の大量投入に感動した後は、露天風呂へ向かいました。一旦服を着て1階へ下り、フロントの脇を通って勝手口から屋外に出ます。渓谷の底へ向かって階段を下りてゆくと、途中で道が分岐していました。男湯は右手へ。

 
 
階段を下り切った目の前に、露天風呂の湯船がお湯を湛えてていました。湯船の傍には簡単な棚や庇が建てられていますが、特に洗い場のようなものはないので、露天利用の際は、汗や垢をあらかじめ内湯でしっかり落としておいた方が良いかと思います。
日本庭園のような誂えの露天風呂は、立派な岩が外縁を囲んでいますが、湯船の底は砂利敷きという一風変わった造りです。木の樋からふんだんにお湯が注がれており、谷側の縁より惜しげも無く溢れ出ていました。こちらのお湯も加水されているらしく、樋から出てくるお湯は熱くなったりぬるくなったりと、温度の上下を繰り返していましたが、その甲斐あってか湯加減はちょうど良い塩梅です。湯中では湯の華が舞い、湯面からは焼けたような硫黄臭がしっかりと香っていました。ただ浴槽の容量が大きく、且つ外気の影響も受けやすいのか、無色透明でクリアだった内湯とはやや異なり、こちらではわずかに白く霞んでいました。お湯の質としては内湯の方が好感触でしたが、やはり開放的なロケーションと素晴らしい景観を楽しめる露天風呂にも心惹かれます。梓川によって深く刻まれた渓谷の山肌は荒々しい部分もあり、崩壊と再生を繰り返す自然の厳しさをまざまざと見せつけられますが、好天に恵まれたこの日はその荒々しさすら美しく、渓谷の緑をを見上げながらの湯浴みは最高のひと時でした。

坂巻温泉1号源泉・2号源泉混合泉
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉 67.5℃ pH6.6 232L/min 溶存物質1088.2mg/kg 成分総計1229.1mg/kg
Na+:180.5mg(61.14mval%), Ca++:75.7mg(29.44mval%),
Cl-:137.3mg(29.75mval%), SO4–:190.8mg(30.51mval%), HCO3-:303.0mg(38.20mval%),
H2SiO3:162.4mg, CO2:140.7mg, H2S:0.2mg,
(平成18年3月2日)
源泉温度が高いため、熱交換後、山の湧水により加水。加水率は30〜40%位。
加温・循環・ろ過なし(ただし内湯の溢れ湯を露天風呂の底面に注入している場合あり)

松本あるいは新島々バスターミナルよりアルピコ交通バスの上高地行・高山行・新穂高行(季節運行)で「坂巻温泉」下車すぐ
長野県松本市安曇4460  地図
0263-95-2453
ホームページ

日帰り入浴時間:内湯11:00〜16:00、露天9:00〜16:00
600円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類・ドライヤーあり(いずれも館内。露天には無し)

私の好み:★★★

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