弘前市 桜温泉

青森県

 
引き続き青森県津軽地方の温泉をめぐります。今回は弘前市の郊外、旧岩木町の中心部に近いエリアにある「桜温泉」を取り上げます。この温泉は地元の観光バス会社が運営しており、同じ施設で「ニュー桜旅館」という宿泊施設も兼業しています。弘前の市街から岩木山神社へ向かう県道3号線に面しているため、当地を観光する方でも比較的わかりやすい立地かと思います。このブログでは初登場の温泉ですが、私個人としては3度目の再訪です。

 
下足場に設置されている券売機で料金を支払い、券を番台へ差し出します。アパートみたいな地味な外観とは裏腹に、館内は広くて和の趣きがあり、休憩用スペースはもちろんのこと、食堂やお土産販売スペースなど、温泉施設らしい各種設備が揃っています。お昼時に食事を兼ねて温泉に入りに来るのも良いかもしれませんね。

 
番台から左の方へ進むと浴場です。広くて綺麗な脱衣室内も、フロントホール同様に木材や木目の建材を多用することによって、ぬくもりのある和風の空間となっていました。棚の数は多く、ロッカーも設置されており、洗面台ではドライヤーも使えますので、使い勝手に問題ありません。

 
浴室は天井が高くて広々としていますが、こちらも壁などに木材が多用されているため、ウッディーで落ち着いた雰囲気の中で湯浴みすることができます。男湯の場合は向かって右側に浴槽、左側に洗い場やサウナ・水風呂が並んでいます。また、洗い場に関しては浴室左側のほか、浴槽の手前側にもいくつか用意されており、計12基のシャワー付きカランが取り付けられています。

 
内湯の浴槽は大小に2分割されており、手前側の大きな浴槽は(目測で)2.5m×4.5mほどの長方形。万人受けする42〜43℃のお湯が張られています。一方、その奥にある小さな浴槽は(同じく目測で)2.5m弱×2mほどのサイズなのですが、山椒は小粒でもぴりりと辛いと言うべきか、こちらの浴槽は45℃以上はあろうかと思われるかなり熱めの湯加減となっていました。2つの浴槽を仕切る位置に柱が立っていて、その柱には両浴槽へお湯を注ぐ湯口が取り付けられており、いずれからもしっかりとした量のお湯が吐出されていました。おそらく大きな適温槽は加水されており、熱い小浴槽は源泉のお湯がそのままか、あるいは加水されているとしても最小限に抑えられているものかと推測されます。
両浴槽ともにおそらくヒバ材を用いた総木造で、浴槽の縁からお湯が惜しげもなく溢れ出ているのですが、その縁の下に敷かれている排水用のグレーチングまでも木工品という徹底ぶりで、細部まで木材の質感に心血を注ぐ妥協しない姿勢には敬服しちゃいます。とても350円で利用できる公衆浴場とは思えないほど上質な造りです。なお床には石材が敷き詰められているのですが、浴槽からオーバーフローする温泉の成分がこびりつくことにより、浴槽周りを中心としてほぼ全般的に褐色に染まっていました。

 
350円の公衆浴場にもかかわらず露天風呂に入れるのですから、嬉しいではありませんか。こちらの浴槽も総木造なのですが、一般的な四角いお風呂ではなく、直径1.8mはありそうな大きな樽風呂が据え付けられています。もっとも頭上は屋根で覆われ、四方も塀で囲まれているため、開放感を味わったり景色を眺めながら入浴するわけにはいきませんが、丸太橋のような飾りや石灯籠などを拵えることによって和の趣き作りに努力していますので、外気を感じながらそれらを眺めて樽風呂に入ることにより、公衆浴場とはひと味違う非日常の湯浴みを楽しめるかと思います。

旧岩木町エリアには百沢温泉という塩化土類泉の名湯や、新岡温泉やあたご温泉などのモール泉など、多様な泉質の温泉が存在していますが、桜温泉はそうした近隣の温泉に見られる2つの特徴、そして津軽平野の温泉で多い食塩泉的な側面という、併せて3つの要素をミックスさせていいところ取りをしたような面白い質感を有しています。具体的に特徴を述べますと、見た目に関しては浴槽の底が見えないほど濃い山吹色に濁っており、明るさを抑えている内湯においてはモスグリーンを帯びているようにも見えます。お湯をテイスティングしますと、はっきりとした塩味と出汁味、炭酸味、そして土類系の味が感じられるのですが、その裏で新岡温泉系のモール泉っぽい風味も存在感を主張しており、ひとくちで特徴を言い表せないような重層的な知覚的特徴を兼ね備えています。あえて端的に表現すれば、福島県奥会津の只見川沿岸の温泉から金気を弱めたような感じかもしれません。
お湯の濁り方から想像するに、塩化土類泉的なギシギシと引っかかるマット感のある浴感を想像しますが、意外にも湯中では滑らかなツルスベの方が強く、引っかかりは寧ろ影を潜めています。食塩やメタケイ酸の多さがその浴感をもたらしているのかもしれません。食塩が多いということは熱の湯であり、長湯できないほどよく温まって、湯上がりもしばらくは汗が引きません。特に内湯の小浴槽に入ると1分も経たないうちに逆上せそうになるのですが、全浴槽の中ではこの小浴槽が最も浴感が良いため、熱さを堪えて浴感を味わっていると、あっという間に茹で上がって前後不覚の状態へ陥りそうになりました。でも気持ちいいから熱くてもクセになってしまうんですよね。

今回記事にした大浴場の他、館内には家族風呂もありますので、ニーズに合わせて使い分けることもできるでしょう。リーズナブルに津軽の温泉の良さを堪能できる素敵な入浴施設です。

ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 52.0℃ pH6.6 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質7.181g/kg 成分総計7.569g/kg
Na+:2433mg(90.42mval%), NH4+:5.1mg, Mg++:42.2mg, Ca++:45.5mg,
Cl-:2740mg(77.04mval%), Br-:9.7mg, HCO3-:1376mg(22.49mval%),
H2SiO3:216.4mg, HBO2:94.5mg, CO2:388.7mg,
(平成27年9月16日)
加水あり(入浴に適した温度にするため)

青森県弘前市大字賀田2-10-1  地図
0172-82-4332
ホームページ

6:00~22:00
350円
ロッカー・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント

  1. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    今日はとても寒く、温泉が恋しい限りです。
    ここの温泉は、見るからにとろみがありそうで、
    美味しそうな雰囲気を感じさせますね^^b
    この様に魅力的な源泉のお風呂なのに、
    いつもガラガラなのはタイミングを計っておられるのですか?
    記事に対する情熱をひしひしと感じます^^b
    私も画像を撮影したりはするのですが、、、
    やはりそれなりのデジカメでないとダメですね。
    携帯カメラでは良い画像は撮れませんね(泣)
    しかしこんな白濁ではない濁り湯も良いですね!

  2. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    今日はとても寒く、温泉が恋しい限りです。
    ここの温泉は、見るからにとろみがありそうで、
    美味しそうな雰囲気を感じさせますね^^b
    この様に魅力的な源泉のお風呂なのに、
    いつもガラガラなのはタイミングを計っておられるのですか?
    記事に対する情熱をひしひしと感じます^^b
    私も画像を撮影したりはするのですが、、、
    やはりそれなりのデジカメでないとダメですね。
    携帯カメラでは良い画像は撮れませんね(泣)
    しかしこんな白濁ではない濁り湯も良いですね!

  3. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんばんは。
    寒い一日でしたね。温泉を恋しく思う気持ち、同感です。
    こちらのお湯は結構熱めで、かつ濃いめの食塩泉ですので、今日みたいな寒い日には体の芯までしっかり温めてくれるかと思います。

    >いつもガラガラ
    なるべくタイミングを考えて訪問するようにしています。それでも混雑している時があって、そういう場合は記事にはできません(涙)。わざわざ遠隔地まで足を運んだのに、徒労に終わることが結構多い気がします(笑)。

  4. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんばんは。
    寒い一日でしたね。温泉を恋しく思う気持ち、同感です。
    こちらのお湯は結構熱めで、かつ濃いめの食塩泉ですので、今日みたいな寒い日には体の芯までしっかり温めてくれるかと思います。

    >いつもガラガラ
    なるべくタイミングを考えて訪問するようにしています。それでも混雑している時があって、そういう場合は記事にはできません(涙)。わざわざ遠隔地まで足を運んだのに、徒労に終わることが結構多い気がします(笑)。

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