オフシーズンの平六地蔵露天風呂やダジュール岩地

静岡県

たまにはちょっと変わった視点から温泉を捉えてみましょう。

西伊豆の松崎町では海岸の断崖に沿って岩地・石部・雲見という3つの漁村が南北に並んでいますが、地元ではこの3地区をまとめて三浦(さんぽ)と呼んでおり、この三浦地区で営業している温泉宿の多くは、松崎三浦温泉株式会社が集中管理している温泉(混合泉)の供給を受けています。前回記事で取り上げた「民宿大漁」もそのひとつであり、お湯にはしょっぱくて苦いという特徴があります。そして宿泊施設で使い切らなかった余剰分(オーバーフロー)の温泉は、赤井浜露天風呂・平六地蔵露天風呂・ダジュール岩地など、無料で利用できる露天風呂や足湯へ回され、有効活用されています。しかしながら、足湯は通年利用できるものの、全身浴で利用する露天風呂の利用可能期間が限られており、当地の観光オフシーズンである冬季にはお湯が抜かれてしまいます。そこで今回記事では、オフシーズンにおける各露天風呂の様子を確認してみたいと思います。なお私が訪れたのは2016年4月です。

●雲見 渚の足湯
 
雲見の海岸沿いに建つセミクジラの博物館「雲見くじら館」。その前に設けられた「渚の足湯」は、海原を眺めながら足湯を楽しめる穴場的観光スポットです。2002年に地元の方々が海辺の石や岩を集めてこの足湯をつくったんだとか。

 
足湯へ近づくとカタカタと音が聞こえてきました。さらに進んでゆくと足元ではポンプが動いており、しっかりとお湯を足湯へ供給していました。こちらは通年利用が可能です。

 
お湯の温度を測ってみたら41.3℃という素晴らしい湯加減でした。できれば足だけでなくその場で服を脱いで全身浴したいものです。お湯はもちろん苦くてしょっぱいもの。目立ちにくい場所にあるためか、シーズンオフにはほとんど利用客がおらず、この時も私以外には誰もいませんでした。電気代・ポンプの整備代など、経費もバカにならないでしょうから、もし当地へ立ち寄ることがありましたら、ぜひ活用してあげてください。

●赤井浜露天風呂
雲見の無料露天風呂といえば、雲見の漁港や集落からちょっと北上したところにある「赤井浜露天風呂」。波打ち際で海を眺めながら温泉に浸かることができる素晴らしいロケーションの露天風呂であり、6月中旬から9月中旬まで期間限定で利用することができます。以前拙ブログでは11月に訪れた時のことをレポートしたことがありますが、その時はぬるかったもののお湯が張られており、入浴することができました(以前の記事はこちら)。しかしながら、2016年4月に私が訪れた時にはメンテナンス作業中だったため(シーズンインに先立つ準備?)、立ち入ることができず、見学も適いませんでした。このため今回はレポートできません。ごめんなさい。

●平六地蔵露天風呂
 
つづいてやってきたのは石部漁港の片隅にある有名な無料入浴施設「平六地蔵露天風呂」。こちらも利用可能期間は限られており、具体的には5月1日から10月31日までです。繰り返しますが、私が訪れたのは開放を目前に迫った2016年4月の某日。まだ利用可能時期ではありませんが、さて、どうなっているのでしょうか。

 

平六地蔵露天風呂には更衣室やシャワーなどが備えつけられており、とても無料施設とは思えません。


肝心の露天風呂ですが、まだ開放前だったため、やはりお湯が抜かれていました。11月から4月までは外気の影響でお湯がぬるくなるため、お湯を張っていないそうです。
岩の上でお地蔵さんが見守るこの露天風呂は、浴槽がひとつしかないため混浴ですが、水着着用ですからどなたでも気軽に利用できるかと思います。

 
浴槽は空っぽでしたが、でも配管にはお湯が来ており、53.6℃のお湯が脇を流れる沢へ垂れ流されていました。あぁ、もったいない。もちろん、こちらのお湯もしょっぱくて苦いものです。

●ダジュール岩地
 
次は岩地地区へ。
国道沿いの公共駐車場から海沿いの集落を俯瞰すると、砂浜に一艘のヨットが上がっているのがわかります。

 
 
そのヨットこそ、温泉船として有名な「ダジュール岩地」です。ヨットの舳先に広がる砂浜は弧を描く小さな入江になっており、海はとても静かでした。

 
ここは船体そのものが浴槽になっているという変わり種のお風呂ですが、ここもオフシーズンにはお湯が抜かれて空っぽでした。なお利用可能期間は海水浴シーズン真っ盛りの夏ですが、ネット上の情報によれば、10月頃まではお湯が張られているそうです。平六地蔵露天風呂と同じくこちらも水着着用での入浴となります。海水浴客の利用を前提にしているかと思われますが、裏手には公衆トイレがあるので、もし海水浴をしない場合はトイレで水着に着替えても良いかもしれませんね。なお岩地の集落内は民家や民宿が密集しており、細い路地が入り組んでいますので、車をとめるようなスペースがありません。国道沿いに広い駐車場が用意されていますので、多少歩きますがこの駐車場を使ってください。

 
お湯は抜かれているものの、温泉自体は少量ながら吐出され続けており、試しに温度を測ってみたら60.6℃という結構な高温でした。言わずもがら、しょっぱくて苦いお湯です。

●源泉など
 
この記事で取り上げてきた足湯や露天風呂は、冒頭で申し上げたように、すべて松崎三浦温泉株式会社から供給されているものであり、旅館や民宿へ配湯する温泉の余剰分がこれらの施設で活用されています。石部・岩地・赤井浜にある計5ヶ所の源泉からお湯を集め、ミックスさせてから各地区のお宿などへ配湯しているんだそうです。
石部の平六地蔵露天風呂からちょっと山側へ入った国道沿いに松崎三浦温泉の社屋があり、その目の前に源泉櫓が立っているのですが、この源泉(1号泉)は5源泉の中で湧出量が最も多い主力源泉です。またこの1号泉からちょっと山へ入ったところには5号泉があるようです。

 
こちらは岩地の公共駐車場付近。国道下の傾斜地に源泉櫓が立っており、白い湯気を上げていました。こちらは3号泉ですね。

 
一方、国道の路傍には岩地のポンプ小屋があり、3号泉で汲み上げた温泉は、このポンプ室から国道に沿って敷設された配管で各方面へ送られているものと推測されます。

松崎三浦温泉の公式サイトには、配湯されている混合泉のうち、その代表例として3源泉ミックスの分析書が公開されていますので、いつものように拙ブログでもそのデータを抄出させていただきます。

三浦1号(石部・岩地1号)・三浦3号(石部・岩地3号)・三浦5号(石部・岩地4号)
カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 55.7℃ pH7.4 溶存物質12.38g/kg 成分総計12.38g/kg
Na+:1975mg(39.49mval%), Ca++:2576mg(59.09mval%), Mg++:30.2mg,
Cl-:6990mg(92.79mval%), Br-:4.9mg, I-:0.2mg, SO4–:715.3mg(7.01mval%),
H2SiO3:40.6mg,
(平成21年9月15日)

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コメント

  1. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    いやぁ、この雰囲気、たまりませんね~。
    伊東市八幡野にある「海が庭・港屋旅館」、
    この宿こそ、私が今現在最も気に入っている宿なのですが、
    周囲にこの様な朽ちかけた施設群などがあり、
    周囲を散歩しているだけでワクワクしてくるのです^^。
    しかし渚の足湯はすごく勿体無いですよね。
    これほどのロケーション、是非とも全身浴をしたいです!
    この泉質、やはり強烈に汗が噴き出してくるんですかね?
    炭酸泉もそうですが、本物の温泉に入っていると、
    湯温が低くても汗が大量に出てきますよね^^。
    聞いている感じがして嬉しくなってきます。
    来月、いよいよ夏休みですから、私も負けずに行って参ります!

  2. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんにちは。
    おっしゃるように、この記事で取り上げた温泉は「強烈に汗が噴き出してくる」タイプのお湯です。冬はとてもよく温まりますが、これからのシーズンは十分な水分補給が欠かせないかと思います。渚の足湯は絶好のロケーションですよね。周囲から丸見えなので足湯にせざるを得ないのでしょうけど、もし水着可になればぜひ入ってみたいところです。

    >「海が庭・港屋旅館」
    1日4組限定ですか! しかもお風呂も料理もとっても素晴らしいみたいですね。ぬる湯マスターさんがコメントをお寄せくださるおかげで、泊まってみたい宿が増え、伊豆がますます魅力的になってきました。ありがとうございます。

  3. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    港屋旅館ですが、現在は一人旅の受け入れは、
    超限定的にしか受け付けていないのが残念な所^^;
    平日限定、尚且つ電話での予約のみ対応かと思われます。
    言うなれば、今現在、港屋に一人で泊まれるのは、、、
    10年来の常連である、私のみ、と言う事になりますね^^;
    女将さんも、「今では一人旅は○○さんだけですよ^^」と、
    もし機会がありましたら、電話してみると良いかもです。
    お風呂は運び湯で、掛け流しではない様に見えます。
    ただ、海洋深層水の貸切風呂、屋上展望風呂、
    貸切御影石風呂など、どれも素晴らしいですし、
    何よりも料理がグーです!部屋からの眺めも超海ですよ~^^。
    こちらこそ、このブログのおかげで色々知れて嬉しいです。
    これからも、ジリジリと読み進んで参りますぞ^^b

  4. K-I より:

    Unknown
    >港屋旅館
    そうなんですね。もし機会があれば誰かを誘って宿自慢の料理をいただいてみたいものです。私は全国あちこちの宿を転々としながら旅をするタイプなので、どこか定宿を決めて通うことがあまりなく、そのため宿の本当の良さにまだ巡りあえていないのかもしれません。私もぬる湯マスターさんのように気心がわかるような馴染みの宿を作りたいと思っています。

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