栗野岳温泉 南洲館

鹿児島県

 
温泉ファンから支持を集める栗野岳温泉「南洲館」。言わずもがなですが、南洲とは西郷隆盛の雅号であり、西郷どんは明治初期にこの温泉で一ヶ月間滞在し、体を癒していたんだそうです。


構内の道標に従って帳場へ向かい、日帰り入浴の料金を支払いました。場内には「竹の湯」「桜湯」「蒸し風呂」そして宿泊者用のお風呂があり、日帰り入浴の場合は3つの浴場を利用することができますが、利用する浴場数によって料金が異なり、1ヶ所だけなら300円、2ヶ所は550円、3ヶ所は700円とのこと。今回私は550円支払って2ヶ所巡ることにしました。

●竹の湯
 
まずは「竹の湯」へ入ってみることに。敷地内の奥へ進んだ先で、木々に抱かれるように渋い湯小屋が建っており、その傍らには「浴場落成紀念碑」と彫られた古い石碑が立てられていました。


まるで田舎の共同浴場のような鄙び感たっぷりの質素な湯小屋ですが、浴室は貫禄ある石造りで、見るからに古くて湯治場風情が強く残っており、石碑で祝われた落成から相当の年月が経っているかと思われます。

 
上家は木造ですが、壁には切り出し石材が積み上げられています。今、このようなスタイルで湯小屋を建てたら、結構な費用を要するかと思われます。古い建物だからこそ得られる重厚感なのでしょう。

 
浴槽の裏手には温泉の打たせ湯が1本、そして真水が溜められている小さな槽が1つ、設けられていました。

 
浴槽は1.8m×2mほどの大きさで、角はRを描いています。浴槽の縁には木の枕が置かれていましたが、これは湯船に浸かりながら使うものなのか、はたまたトド寝用なのか。
「竹の湯」の特徴は、この石造りの浴槽に張られたグレーに濃く濁る泥湯ですね。石積みの塀の上からお湯が絶え間なく落とされているこのお湯は、ゴム的な匂いと火山の噴気孔的な匂いがミックスされたような硫化水素臭を漂わせており、口に含むと頬っぺたの内側がキュンと収斂するような酸味を有しています。でも加水されているためか、酸味はマイルドであり、群馬県の草津温泉や大分県の塚原温泉みたいに肌を刺激するような感覚はありません。

 
ケロリン桶で湯船のお湯を掬ってみました(画像左or上)。まさに泥湯という感じ。でも実際のお湯はドロドロしているわけではなく、湯船に浸かると少々のマッドな感覚がある他は、むしろツルスベの方が勝っているような感じでした。浴槽の底には湯泥が沈殿していましたので、桶で底部をグイッと浚ってみたのですが(画像右or下)、湯泥は湯船の中で撹拌されているためか、あまり掬い取ることができず、上澄みを流したら、画像に写っているようにちょっとしか残りませんでした。このため湯泥を肌に塗ってパックするようなことは難しいですね。でも湯船に浸かっているだけで十分湯泥は肌に馴染んでくれるので、お湯の濃厚さを実感することができました。

●桜湯
 
続いて「桜湯」へ。各浴場はそれぞれ別棟ですので、浴場間を移動する場合は一旦服に着替えることとなります。共同浴場然としていた「竹の湯」とは対照的に、こちらの浴場は正面玄関近くのわかりやすい場所にある立派な建物。このお宿における主浴場としての役割を担っているものと思われます。

 
板の間の脱衣室を抜けて浴室へ。引き戸を開けた瞬間、硫黄臭が鼻を突いてきました。「竹の湯」より遥かに広い室内の中央に四角い浴槽がひとつ据えられています。壁には水道の蛇口が2〜3ヶ所設置されており、蛇口の金具は硫化して青黒く変色しているのですが、水栓の劣化が進んでいるためか、あるいは元から止めているのか、水が出るのは1ヶ所だけで、しかもチョロチョロ程度でした。なおシャワーなどはありません。足元は切り出し石材が敷かれており、老舗旅館らしい風格と重厚感を漂わせています。側壁の下部にはルーバーが取り付けられていますが、これは硫化水素ガス対策かと思われます。


梁がむき出しの天井はとても高く、その頂点は湯気抜きになっていました。

 
浴槽は総石材作り。大きさは目測で1.8m×2mほどでしょうか。何か神々しいものを感じる不思議な形状の湯口からは、お湯が静かに落とされており、そのお湯が張られる湯船は少々のオリーブグリーンを帯びる白濁を呈していました。湯口や湯面からは、噴気孔から放たれるような刺激を伴う硫化水素臭が強くと香り、軟式テニスボールのようなゴム臭も混在していました。口に含むと決して強くはないもののはっきりとした酸味があり、その酸味によって口腔の粘膜が収斂しました。湯中ではツルスベ浴感があり、「竹の湯」のような湯泥はあまり見られませんので(その代わり、底には砂利のようなものが沈殿していました)、泥湯のような癖のあるお湯が苦手な方にはこちらの方が入りやすいですね。

●八幡地獄

「桜湯」の裏手には「南洲翁遊猟之地」と刻まれた石碑が立っており、その後ろに外来入浴で利用できるもう一つの浴場「蒸し風呂」があるのですが、今回「蒸し風呂」は利用しておりません。

 
「蒸し風呂」の左手には階段が伸びており、その階段を登ってトレイルを進み森へ入ってゆくと、やがて視界が開けてガレ場になりました。「南洲館」の各浴場にお湯を供給している八幡地獄に到着です。

 
栗野岳の山腹に広がる地獄の随所から、白い湯気が朦々と上がっており、硫化水素臭を漂わせていました。トレイルの足元では温泉が湧出しているところもありました。案内文によれば、この地獄は2ヘクタールもの広さがあるんだとか。

 
トレイルは大きな湯沼の手前で行き止まり。どこかで野湯ができそうですが、理性を働かせて自制しました。それにしても、ものすごい噴気です。栗野岳のパワーに圧倒されました。

(竹の湯)
栗野岳1号
酸性・含鉄(Ⅱ・Ⅲ)-アンモニア-硫酸塩温泉 90.0℃ pH2.2 溶存物質2295.9mg/kg, 成分総計2296.1mg/kg
H+:6.3mg(21.76mval%), Na+:15.8mg, NH4+:188.0mg(36.29mval%), Mg++:28.6mg, Ca++:38.4mg, Al+++:46.6mg(18.04mval%), Fe++:46.2mg,
Cl-:5.0mg, HSO4-:264.9mg, SO4–:1259.7mg(90.13mval%),
H2SiO3:379.9mg, H2SO4:4.2mg, H2S:0.2mg,
(平成19年9月25日)
加水あり(強酸性のため)

(桜の湯)
栗野岳4号
酸性単純硫黄温泉 61.2℃ pH2.8 溶存物質283.8mg/kg, 成分総計286.2mg/kg
H+:1.6mg(47.16mval%), Na+:5.4mg, NH4+:3.1mg, Mg++:3.9mg, Ca++:9.8mg(14.53mval%), Al+++:3.7mg(12.22mval%), Fe++:2.0mg,
Cl-:5.8mg, HSO4-:8.0mg, SO4–:149.2mg(92.65mval%),
H2SiO3:87.3mg, H2S:2.3mg,
(平成19年9月25日)
加水あり(温度調整のため)

JR肥薩線・栗野駅より湧水町ふるさとバスの東回りもしくは観光回り(土日祝や春夏冬休みに運行)で「栗野岳温泉」下車すぐ
(時刻は湧水町公式サイトにてご確認ください)
鹿児島県姶良郡湧水町木場6357  地図
0995-74-3511
ホームページ

日帰り入浴9:00〜20:00
1ヶ所だけなら300円、2ヶ所は550円、3ヶ所は700円
桜湯に石鹸およびドライヤーあり、他備品類なし

私の好み:★★★

コメント

  1. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    やはり★三つですか^^b
    私も硫黄泉が大好きで、年始も万座に行くんですが、
    本当は乗鞍のペンションかりんに行きたかったんですよ。
    どうも、営業を縮小したらしくて一人の受け入れがNGに(><)
    一時的なものだと信じたいです。
    この重厚感のある石造りのお風呂場に、
    似つかわしく無いケロリンが良い味を出してます。最後はこの地獄で、ジャパンカップへの煩悩を、
    洗い流せれば最高なのですが^^;

  2. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんばんは。
    今まで利用できた宿が不可になるのはショックですね。それでも乗鞍から万座へ変更なさるとのことで、余程白濁の硫黄泉がお好きなんだとお察しします(^^)
    私は年末と年始の2回に分けて、コンパクトに出かけられたらと考えているのですが、まだ予約も何もしておらず、果たして実現できるかどうか・・・。

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