(2020年11月訪問)
多くの温泉を訪ねている私にとって「一番良い温泉はどこですか?」という質問ほど悩ましく答えに窮するものはありません。なぜならどの温泉もそれぞれの個性があって素晴らしく、甲乙を付けること自体に違和感を覚えるからです。しかし、そんな中でも敢えて答えなくてはいけない場合、私は青森県下風呂温泉の名前を挙げることにしています。なぜなら個人的に大好きだから。本州の北端らしい最果て感があり、アットホームでリーズナブルな小規模旅館ばかりで、硫黄たっぷりのお湯に浸かった後は、目の前の津軽海峡から水揚げされた新鮮な海の幸に舌鼓を打てるという、私好みの条件をいくつも兼ね備えているからです。
拙ブログでもいままで複数の施設を紹介しており、昨年(2020年)11月には閉館カウントダウン中だった公衆浴場「新湯」と「大湯」を取り上げました。これら両公衆浴場を訪ねた際、私は「さが旅館」で一晩お世話になっていましたので、今回記事ではその時のことを書き綴ってまいります。
宿が位置する場所は昨年閉鎖されてしまった大湯公衆浴場の右隣、「まるほん旅館」の向かい側です。チェックインしますと、とても気さくな女将さんが色々とお話ししながら、お部屋へと案内してくださいました。
この時通されたお部屋は上画像の和室です。清掃が行き届いた室内にはテレビやエアコンが完備されている他、トイレや洗面台も備わっており、とても便利で快適に過ごせました。
お部屋の窓を開けると、まず目の前に大間鉄道未成線を遊歩道化した「鉄道メモリアルロード」が目の前を横切り、その向こうに下風呂の漁港と津軽海峡を望めます。
かつてアイヌの方々がしょっぱい川と呼んだ津軽海峡の対岸には北海道の姿がはっきり見えます。おそらく恵山でしょう。当地を旅したことがある方ならご存じかと思いますが、当地は青森県にもかかわらず、北海道のテレビやラジオの電波が海峡を越えてしっかり届くため、青森と北海道両方の放送を視聴・聴取できるんですね。
下風呂温泉に宿泊する楽しみの一つが、新鮮な海の幸。当然ながらお宿によって献立や得意料理が異なりますが、どの宿も魚介が中心であり、とっても美味!
上画像は夕食です。品数が多くて食べきれそうになかったのですが、とても美味しいので気づけばペロリと平らげていました。
この時はオプションで活アワビのステーキをお願いしました(予約の際に申し出ています)。おそらくご近所の佐井村で採れたものではないかと思います(佐井は天然・養殖両方のアワビの産地です)。活きたアワビは身を左右によじりながら火あぶりにされ、その姿を目にすると少々気の毒な気もしますが、でもこれが実に美味。しかも他の地域と比べると当地はかなりお安くいただけます。おすすめ。
こちらは朝食。ホタテや焼き魚などの他、下風呂名物のイカがお刺身として出されました。近年はイカの不漁が続いており、東京ではなかなか美味しいイカを入手できないため、私は敢えてイカを口にしないでいたのですが、さすが下風呂のイカは非常に美味。久しぶりのイカに私は欣喜雀躍でした。
さてお風呂へまいりましょう。浴場は1階にあり、シンプルな造りの内湯が男女1室ずつ。綺麗に手入れされていますから気持ち良く湯あみできるでしょう。更衣室から浴室へ入るドアを開けると、ご当地ならではの硫化水素臭がツーンと鼻孔を突いてくれるので、温泉気分が一層盛り上がること間違いなし。なお洗い場にはカランが5基並んでおり、うちシャワーつきは3基です。
縁に木材が用いられることで見た目も感触も柔らかく温かな感じをもたらしている浴槽。私はこの湯船へ宿泊中に5回ほど入ってしまいました。
下風呂温泉には大きく分けて大湯・新湯・浜湯という3種類の源泉があり、宿によって引いている源泉が異なることは、温泉マニアには夙に知られていますが、こちらのお宿に引かれている源泉は新湯です。
当記事の冒頭で申し上げたように、こちらのお宿は大湯公衆浴場に隣接していますし、周囲のお宿も大湯源泉を引いているので、ここも大湯を引くのが自然なのですが、なぜか離れたところで湧く新湯源泉をわざわざここまで引いているのです。
白濁しやすい大湯と異なり、新湯は比較的透明なことが多く、引湯距離が長いこちらのお宿では湯の花が発生しやすいのが特徴です。下風呂の多くの旅館では湯口にストッキングを被せて湯の花を漉し取っていますが、こちらでは湯口で漉し取らずそのまま投入しているので、湯の花がたくさん舞うのでしょう。しかし、私が宿泊した時は、透明ではなく湯の花もさほど舞うことなく、夜も翌朝もひたすら白濁し続けていました。硫黄泉はコンディションによって見せる姿が異なり、大いに固定概念を覆してくれるので実にユニークですね。
ちょっと熱い湯加減なのですが、とにかく浴感が素晴らしいので、一度湯船に入ると後ろ髪を引かれて出られなくなってしまいます。訪問時は既に海峡から冷たい風が吹いていましたが、このお湯に浸かったおかげでいつまでもホコホコと温浴効果が続きました。
下風呂はどのお宿もすばらしく、お湯も最高なので、アクセス面に少々難があるものの、何度も足を伸ばして訪ねたくなります。今度はいつ行けるかな。
新湯1・2・3・4号泉(混合泉)
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 78.8℃ pH7.40 溶存物質5.280g/kg 成分総計5.331g/kg
Na+:1179mg(62.23mval%), Ca++:274.7mg(16.64mval%), NH4+:136.4mg(9.17mval%),
Cl-:2402mg(86.35mval%), Br-:3.6mg, I-:1.0mg, HS-:2.8mg, S2O3–:8.7mg, SO4–:294.0mg, HCO3-:250.9mg,
H2SiO3:128.0mg, HBO2:378.7mg, CO2:49.5mg, H2S:1.3mg,
(平成27年11月30日)
青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂24
0175-36-2214
紹介ページ(風間浦商工会)
日帰り入浴不可のようです
夜間23:00~翌朝6:00は入浴不可
私の好み:★★★
コメント
Unknown
こんにちは。
私がさが旅館さんを訪ねたのはもう十年くらい前です。懐かしい湯巡り企画を当地が実施していた頃です。いか、切株、球。三種類とも大切に保管しておりますですよ。今となってはお宝です。
さて、さが旅館さんは立ち寄りで利用させていただきました。終始、私一人で入浴させていただきました。丁度、夕食時だったかと記憶しております。湯底までクリアに見渡せて白い湯花が沈殿してました。たっぷりの湯の花。少々絵心がありますもので、戯れに指で女の子キャラを湯花に記してまいりました。思いのほか良い仕上がりでした。お懐かしいです。今は立ち寄りができないのですかね。
Unknown
中央構造線さん、こんにちは。
以前手形でお入りになったんですね。私も大切に保管しています。今となっては閉じてしまったお宿もあり、少々寂しい感もありますが、新たにオープンした「海峡の湯」にはまだ入っていませんので、下風呂にはまた再訪するつもりです。
Unknown
あけおめです。年の経つのは早いものですね~。
我が家のインコはまだ戻ってきませんが、、、
大分元気になりましたので、先日は伊豆大仁にある、
「旅館一二三」と言うところで温泉を楽しんできました^^。
K-I殿にぴったりの、情緒溢れる素敵なお宿でしたよ。
ボロいですが、その分温泉と食事が良くてお値段も安い。
さすがに、この記事の温泉には勝てませぬが^^b
硫化水素泉に、海の幸とは何とも羨ましすぎますね。
イメージ的には硫化水素泉だと山奥、乗鞍や万座ですよね。
海側だと硫酸塩泉、塩化物泉のイメージなのに、
この組み合わせはもはや最強と言わざるを得ないでしょう!
Unknown
ぬる湯マスターさん、あけましておめでとうございます。よく「今まででどの温泉が一番良かったですか」と聞かれる機会が多く、その都度答えに困っているのですが、そうした場合は下風呂温泉と答えるようにしています。お湯も味覚も素晴らしく、非常に私好みなんです(^^)
大仁の「旅館一二三」は以前日帰り入浴で訪ねたことがあり、良いお湯だったことを覚えています。なるほど宿泊利用も良さそうですね。