前回記事まで九州の温泉を連続して公開していましたが、今回と次回は日本列島を一気に北上し、本州の北端である青森県下北半島の下風呂温泉を取り上げます。拙ブログではこれまで何度も下風呂温泉をご紹介していますが、今回は特別な事情があってどうしても2020年11月末までに取り上げざるを得ない事情があったのです。
と申しますのも、当地を代表する2軒の公衆浴場「大湯」と「新湯」が2020年11月末を以て閉館してしまうのです。日本全国に星の数ほどある温泉の中でも、下風呂温泉は私が特別に思い入れている大好きな温泉地ですから、何が何でも現地に赴いてお別れを告げたいと思い、私の仕事が落ち着き始めた11月上旬に時間を作って日本列島を北上したのでした。閉館まであと3週間というタイミングでした。
まずは「新湯」から。なおこの画像は入浴した日の翌朝に撮ったものです。
私が当地を訪ねた日は折からの寒波が俄然強まり、青森や盛岡などの市街地でも初雪が観測されたほか、この下風呂でも白いものが空からチラチラと舞っていました。また津軽海峡を挟んだ対岸の北海道に連なる恵山やその周りの山々も、稜線付近は真っ白に染まっていました。上画像で男湯の暖簾がめくれ上がっているのは、おそらくそんな寒風の影響か、あるいは意図的に竿へ上げているものと思われます。
券売機で入浴料を支払い、プラスチックの入浴券を手に取って館内へ。
脱衣室からは昭和の香りがそこかしこから漂っており、実に良い雰囲気です。おばちゃんがテレビを見ながら番をしている番台には今時珍しいピンクの電話が置かれていました。
壁に貼られた伊奈かっぺいの防犯ポスターがいかにも青森県。
天井にはシーリングファンなんて物が取り付けられていたんですね。
さて、着替えてお風呂へ。次回取り上げる予定の「大湯」は浴槽が2つあって、温度別に分かれていますが、「新湯」は一つだけ。しかも結構熱いので要注意。木の床、そしてプールか生け簀を連想させるコバルトブルーの浴槽は、下風呂温泉にある2つの公衆浴場の共通した特徴です。この独特な景観も過去帳入りするのかと思うとセンチメンタルになってしまいます。
はっきりと白濁する「大湯」の源泉に比べ、「新湯」のお湯は透明度が高いことで知られていますが、私が入浴した日は「大湯」に負けないくらいしっかりと白濁していました。独特の香りや味のみならず、気温・湯温・照度・濃度など、その時々のコンディションによっていろんな姿に変幻するのが硫黄泉の面白いところです。
湯船に入ると熱さで全身が真っ赤になってしまいますが、でも何故か気持ち良い熱さであるため、いつまでも浸かっていたくなるのが実に不思議。本当に良い湯なんです。
男湯の湯口に限り湯呑みが置かれています。一般的に、湯呑みで飲むのはお茶のお湯ですが、ここでは温泉のお湯を飲むわけです。一見珍しいように思えるものの、両方ともお湯なので字面としては決して不思議なことではありません。湯口のお湯は大変熱いので、私も火傷しないようにふぅふぅ吹きながら飲泉しました。湯口からは硫化水素の香りが強く放たれ、お湯を口に含むと、硫黄らしい味とともに塩味もしっかり感じられます。実に良いお湯です。
下足場にはこんなプレートが置かれていました。またプレートの脇にはノートも行かれていましたので、僭越ながら私もそのノートに短くコメントを記入させていただきました。
素晴らしい風情を残すこの浴舎が消えてしまうのは大変惜しいのですが、2つの旧施設を解体して新施設に統合するのは地元の方の要望だそうですから、こればかりは致し方ありません。今年12月から開業する新施設には心から期待しています。
次回記事では「大湯」を取り上げます。
新湯1号泉・2号泉・3号泉・4号泉(混合泉)
含硫黄-ナトリウム-塩化物温泉 78.8℃ pH7.40 溶存物質5.280g/kg 成分総計5.331g/kg
Na+:1179mg(62.23mval%), NH4+:136.4mg(9.17mval%), Ca++:274.7mg(16.64m,val%),
Cl-:2402mg(86.35mval%), Br-:3.6mg, HS-:2.8mg, S2O3–:8.7mg, SO4–:294.0mg(7.80mval%), HCO3-:250.9mg(5.24mval%),
H2SiO3:128.0mg, HBO2:378.7mg, CO2:49.5mg, H2S:1.3mg,
青森県下北郡風間浦村家の尻13
0175-36-2860
4月~10月→7:00~20:30、11月~3月→8:00~20:30、火曜定休
350円
私の好み:★★★
コメント
Unknown
山を背にし、坂道を上った先に待っていてくれる浴場。入口がやや斜に構えているように見える様子が、素直じゃないだから、といつも思っていた。周囲より一段低く、比較的オープンな佇まいの大湯と対比して、案外いいコンビかもねとも思っていた。たくさん利用したわけではないのだけれど、視界の中にあるというだけで安心できる風景でありました。つぎに下風呂を訪ねても坂道の先にいつもの風呂屋はないのだねえ。
Unknown
海峡の湯に統合することについては、風間浦村の総意ではあっても、下風呂地区の総意ではなかったようです。そもそも3つの自治体が合併してできた村であり、そのなかでも一番の外部集客が見込める下風呂地区、その日帰り入浴施設にほとんど駐車場がなく、さらに集落奥に位置することから、他地区(選出の)議員さんなどが「国道沿いに新設を!」と言い始めたことがきっかけとなったようです。まぁ、そうでもなければ動かなかったプロジェクトだったかとも思います。ちなみにこのニュースソースは2019GWに訪問したかどや旅館のご主人でしたが、まさかその後お宿を閉じてしまわれたとは‥。
http://achikochi.takema.net/kokunai7/2019_05gw/2019_05gw_5.html
11月後半は惜しかったですね。今度こそお会いできればと。
Unknown
Takemaさん、こんにちは。
かどや旅館さん、確かに閉まっていました(私も自分の目で確かめました)。残念です。まさかTakemaさんが利用した後にクローズしてしまうとは予想だになさらなかったかと思います。
こういう施設の統廃合では、みんな丸く収まって進むことの方が珍しいのでしょうから、実に難しいところですね。昔ながらの風情を残す施設が消えてしまうのは残念ですが、観光客はもちろん、下風呂・易国間・蛇浦、それぞれ地域の方が「新しい施設になってよかった」と言ってくれるような施設になることを願うばかりです。
今年も数日違いで某所をすれ違ってしまったようですね。どうしていつもこうなっちゃうんだろう(涙)。今度こそは是非!
Unknown
K-Iさんが訪問する3日前に行きました。
ノートの汚い字読まれちゃったかな!?(^^;
まだ実感がわきません。
新湯と大湯
まだ入れると思ってしまっている自分・・・
Unknown
プンタさんの気持ちがこもった書き込み、拝見しております(^^)
おっしゃるように、未成線の築堤を潜って坂を上れば、今でも当たり前のように大湯と新湯が営業しているもんだと、つい思ってしまいますよね。