(2025年5月訪問)
いつも1年以上前の訪問記ばかり記事にしている拙ブログですが、今回は珍しく2週間前に行ってきたばかりの新鮮なネタをご紹介します。温泉資源が豊富な台湾にはたくさんの野湯が湧出しており、これまでも拙ブログでその多くを記事にしておりますが、今回取り上げるのはおそらく台湾で唯一と思われる海辺に湧く野湯です。
場所は宜蘭県の南澳。まずはレンタカーを駐車スペースに停め、靴をビーチサンダルに履き替え、ここからは徒歩で目的地へ向かいます。ちなみに、画像に写っている白い車(台湾車のLUXGEN)は今回の旅行で私が借りた車です。
今回目指す温泉は、駐車スペースから「南澳神秘海灘」と呼ばれる景勝地に向かって砂浜を南下する途中にあるようです。でもこの景色を見る限り、温泉が湧出しているとは思えませんね。
途中で落石が砂浜に覆いかぶさっている箇所を通過。
駐車スペースから歩くこと10分ちょっとで、上画像の場所に到達しました。砂に埋まる大きな岩の真下には・・・
こんな感じで湯溜まりができています。
この湯溜まりの奥にはひと筋の細い流れがあり、その流れの元を辿ると・・・
岩盤の割れ目からぬるいお湯が湧出していました。
その温度は36.5℃。ぬるいものの、れっきとした温泉です。このお湯を口に含んでみますと、ほぼ無味無臭に近いのですが、ほんのりと金気を有していました。お湯の流路が赤く染まっているのはその金気の影響ではないかと思われます。
岩盤割れ目の湧出点から振り返って、海の方を眺めてみましょう。
こんな感じで、砂浜に湯溜まりができているのです。良いロケーションでしょ。
湯溜まりをよく観察すると、底からプクプクと気泡が上がってきます。岩盤から湧出してここへ流れ込んでくる温泉の他、どうやらこの湯溜まりの底からも温泉が湧出しているようです。
この湯溜まりは42.6℃もありました。この日はさほど暑くもなく、霧雨混じりの曇天なので日差しが照り付けているわけでもありません。岩盤湧出の温泉はここまで流れてくる間に36.5℃から徐々に冷めてゆくはずですから、湯溜まりの底から湧き上がる温泉によって湯温が42.6℃まで上がっているわけです。
全景を動画撮影してみました。
動画撮影後、実際に入浴してみました。浅い湯溜まりなので寝そべらないと肩まで浸かれませんし、とにかく砂で濃い灰色に濁っているため、湯中の体も砂だらけになり、正直なところあまり気持ち良い湯あみとは言えませんが、でも台湾で唯一と思われる海岸の野湯に入れただけでも十二分に貴重な体験です。なおこの砂浜は「南澳神秘海灘」を目指す観光客がバギーに乗って走ってきますので、誰もいないからといって水着を着ずに入浴するのは止めておいた方がよいでしょう(水着を着用しましょう)。
当地は戦前の日本統治時代に先住民族が住む「ルキヨフ(魯基岳夫)」集落として認識されており、台湾総督府の日本人技師(小笠原美津雄)が1933年に作成した地質図にこの温泉の存在も記録されていたようですが、その後は土砂に埋もれてしまい、1985年に行われた道路掘削の際に一時的に温泉が復活したものの、再び埋もれて消えてしまいました。長年にわたって土砂に埋もれたまま忘れ去られていた幻の温泉だったわけです。しかしながら、はっきりとした理由は不明ですが、2024年の地震や台風などによって源泉の環境が変化して温泉の湧出が復活し、今回訪ねたような温泉の湧出や湯溜まりの形成に至ったようです。
既にこの野湯は、台湾のアウトドア愛好家には知れ渡っているようですが、まだ日本語メディアで取り上げているところは無いかと思いますので、今回ご紹介させていただきました。
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