岩井温泉の中心部に位置する「日本秘湯を守る会」会員の旅館です。宿泊だといいお値段するので、日帰り入浴をお願いしてきました。
老舗らしい上品な館内には掛け軸や骨董のお皿が陳列され、骨董屋さんが見たら「いい仕事してるねぇ」と唸りそうな調度品も置かれています。
庭園を見ながら歩けるガラス張りの浴室へのアプローチも素敵。
お風呂は足元湧出の内湯「長寿の湯」、露天「背戸の湯」、内湯「祝いの湯」の3つに分かれており、長寿の湯と背戸の湯はセットになっているらしいのですが、これらの浴室は男女日替わりになっており、運悪くこの日の男湯は「祝いの湯」のみだったので、こちらのお宿が誇るお風呂には入ることが出来ませんでした。従いまして、ここでは「祝いの湯」に関することだけを書かせていただきます。
脱衣所に入るとお香のいい香りが。畳敷きなので裸足でも楽です。どちらかといえば狭い空間ですが、共同浴場のように一度に大人数が使うことはあまりないでしょうから、必要最低限の広さに留めたのかもしれません。さすがに旅館だけあって、脱衣所内のアメニティーは充実しています。
浴室でも御香が焚かれていていい香りが漂っていました。木材と石を多用したシックな和風の造りで、一番奥に秘湯を守る会の提灯がぶら下がっています。床の石もただ敷かれているのではなく、歩くエリアとそうでないエリアを分けて違う石材を配しているところも庭園を思わせてくれます。和風一辺倒かと思いきや、画像左奥に写っている明り採りの窓にはステンドグラスが使われていて、明治や大正期のような和洋折衷っぽさをさりげなく醸し出していました。
室内には竹の湯口から湯船へ注がれるお湯がチョロチョロと立てる音が響くのみで、上品な静寂に支配されていましたが…
いきなり入口付近で「カタン」といい音が響くではありませんか。振り返ると、そこには鹿おどしが置かれていました。ちょろちょろとお湯が鹿おどしの筒に注がれています。
洗い場にはシャワー付き混合栓が3基設置され、カランから出てくるお湯は源泉使用です。
浴槽は石板貼り。浴槽の縁から静かながらシッカリとオーバーフローしています。湯口のまわりだけ深くなっており、身長165cmの私ですとへそ上まで沈んでしまうほどです。その部分は底がスノコ敷きになっており、たまに気泡がプクプクと上がってくるのですが、これって足元湧出だったりするんでしょうか(そうだったら嬉しいな)。
お湯はほぼ無色透明ですがやや黄色っぽいようにも見えます。湯口のお湯は飲泉可なので、喜んで口に含んでみると、金気味+石膏味+微芒硝味が感じられるのですが、石膏味にせよ芒硝味にせよ、東日本の硫酸塩泉とはやや毛色が異なるような感じです。湯口で嗅ぐとタマゴらしき匂いと金気の匂いが感じられました。なめらかさの中に引っかかりが混在するような浴感(サラサラとキシキシの混在と表現することもできそう)。黄土色の浮遊物がちらほら見受けられました。ちょうど良い湯加減に調整されているので、いつまでも浸かっていたくなります。後を引く素晴らしいお湯です。
ゆかむり温泉と同じ源泉(第一泉源)のはずですが、こちらの方がはるかにお湯の持つ個性が強く伝わってきました。湯使いに縁るものなんでしょうか、お客さんの出入りが少ないのが良い方向に働いているのでしょうか、あるいは私が雰囲気に呑まれちゃっているだけなんでしょうか。とにもかくにも、お湯にも内部の造りにもうっとりできる、素敵なお風呂でした。
第一泉源
カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉 47.6℃ pH7.3 797L/min 溶存物質1.729g/kg 成分総計1.735g/kg
JR山陰本線・岩美駅(あるいは鳥取駅)より日本交通バスの岩美・岩井線(蕪島または長谷橋行)で岩井温泉下車、すぐ
鳥取県岩美郡岩美町岩井544 地図
0857-72-1525
ホームページ
日帰り入浴12:00~19:30
750円
貴重品は帳場預かり、シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
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