霧島温泉郷の中心である丸尾温泉一帯は、あちらこちらから白い湯煙が濛々と立ち上っており、地熱のパワーが圧倒して他の景色を委縮させるその光景を目にするだけでも私は失禁しそうになるほど興奮してしまいますが、そんな丸尾温泉は旅館やホテルばかりで、意外にも立ち寄り入浴施設が一つしかないらしく、その唯一の存在である「前田温泉 カジロが湯」に先日立ち寄らせていただきました。丸尾温泉の中心であるT字路から至近にあるわかりやすい立地なので、迷うことなく到着です。敷地入口に立てられた名前が記された杭の横でも、管の上から白い湯煙がモクモク上がっています。木造平屋の建物はいかにも観光地らしいファサード。
前田温泉はそもそもこのような鄙びた自炊の湯治宿なんだそうです。観光色の強い丸尾温泉にあって、このような存在は貴重かもしれません。「カジロが湯」は平成17年7月にオープンしたばかり。比較的新しい施設なんですね。ちなみに「カジロが湯」という名前は、この施設を運営する前田産業の創業者である前田嘉次郎さんに由来しているんだそうです。私はてっきり霧島(大隅)の方言か、あるいは地域にゆかりのある動物に関係しているのかと想像していたのですが、まったくの見当違いでした。
駐車場の片隅に足湯が発見。無料かと思いきや、有料(100円)なんですね。
受付の前には温泉蒸気を利用した蒸し器が設置されていました。温泉情緒たっぷり。
受付窓口は駐車場に面しており、そこに置かれた小さな券売機で料金を支払い、男女別に分かれた入り口の暖簾をくぐります。
入口の三和土の前にはボーリングの掘削機が展示されていました。前田産業は霧島温泉における温泉掘削や保守を主な業務としている会社で、この施設はまさに自前で開業させたわけですね。
脱衣所はこれといった特徴こそ無いものの、ウッディな内装からはぬくもりが伝わり、とっても綺麗で使い勝手良好です。
まずは内湯。室内に入った途端、火山の噴気孔のような硫化水素臭が鼻を突いてきます。外気との温度差のために室内に湯気が籠ってしまい、見難い画像で恐縮ですが、浴室は大きなガラス窓が嵌められて、それに面してプールのように大きな浴槽がひとつ据えられており、一人で利用すると広さを持て余してしまい、どこで腰を落ち着かせてよいか迷ってしまうほどでした。浴槽・床ともにタイル貼りで、パイプの湯口からドバドバ大量に投入された源泉は、浴槽が一番幅を狭める端(切欠)から惜しげもなくオーバーフローしていきます。お湯が溢れ出る流路は温泉成分の析出により赤く染まっていました。
お湯は薄ら灰白色に霞んでいますがほぼ透明。弱い収斂味を帯び、砂消しゴム味とタマゴ味がそれぞれ混ざったような硫黄味が感じられます。キシキシと肌にひっかかるような浴感ですが、不思議なことにフワっと優しく包まれるような浴感も有しており、成分的には薄いながらも複雑なパワーを秘めているお湯なんだということを実感させてくれます。
壁には「およがないで」という注意書きが掲示されていますが、これに思わず納得してしまいました。それほど浴槽が広いのです。私は30代半ばのオッサンだというのに、大人げなくお風呂で泳ぎたくなっちゃったのですが、この注意書きを見て反省した次第です。
洗い場はシャワー付き混合栓が4基と立って使うシャワーが2基。画像の右側の床が赤く染まっているのは、浴槽のお湯がオーバーフローしているためです。
室内には温泉熱を利用したサウナも設けられていました。温泉熱によるサウナは、ジワジワ伝わる熱さが強力であるにもかかわらず、機械の熱と違っていくら熱くても全身をふんわり包むような優しさを持っているんですよね。
内湯から扉を出ると露天風呂も併設されていました。浴槽は岩風呂で8人サイズ。周囲を高い塀に囲まれているので景色は全く望めず、塀の上から近くの古い温泉櫓の上端だけがチラっと見えるだけでした。もっとも330円という安い料金で外気に触れられる露天風呂が楽しめるんですから、ありがたいものですね。
丸尾温泉は旅館やホテルばかりですから、そうした施設で立ち寄り入浴をお願いしようとすると、時間的な問題など様々な制約がたちはだかりますが、こちらのような立ち寄り専門施設なら、そうした面倒なハードルがいっさい排除されるので、気楽に利用できて便利ですね。施設自体は外観こそ観光色が強いものの、内部は実用的で、一般の観光客が抱くような温泉情緒を満足させてくれるか微妙ですが、温泉地の共同浴場なんだと割り切って利用すれば、お湯はしっかりとした掛け流しですから、かなり実用性は高いのではないかと思います。
丸尾28号泉
単純硫黄温泉 83.2℃ pH6.0 溶存物質357.0mg/kg 成分総計437.1mg/kg
Na:60.0mg(69.60mval%), Ca:9.2mg(12.27mval%),
Cl:84.6mg(58.29mval%), SO4:33.5mg(17.07mval%), HCO3:58.0mg(23.17mval%),
国分・鹿児島空港・霧島神宮駅などからいわさきバスで「丸尾温泉」下車、徒歩2分程度
鹿児島県霧島市園町高千穂3914 地図
0995-78-4126
ホームページ
7:00~21:00
330円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤー有料(10円)・石鹸やシャンプーなどは販売
私の好み:★★
コメント
温泉写真についてのご質問
こんにちは、はじめまして。
kame38blogというサイトの管理人、亀井といいます。
こちらのK-I様のブログをよく読むようになり、
霧島周辺の温泉に行くようになりました。
参考になる情報をいつもありがとうございます。
質問なのですが、ブログにてUPされている写真は、
どのようにして撮影されているのですか?
私も温泉を撮影したいのですが、
多くの温泉が撮影禁止なので遠慮してしまいます。
入浴する人がいない時間帯を狙うなどでしょうか?
よろしければご教授いただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。
Unknown
kame38blogの亀井様、はじめまして。
いつもご覧くださりありがとうございます。
取材に関しては、その時々に応じて行っており、ご指摘の方法や現地での交渉など様々です。正直なところ、わざわざ遠くまで行ったにもかかわらず、記事にできていない温泉もたくさんあります。もちろん禁止のところは難しいですが(状況や交渉次第です)、どうしてもご紹介したい場合は文章だけで乗り切っています。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
Unknown
こんにちは、亀井です。
ご回答ありがとうございました。
なるほどです。非常に参考になりました。
このサイトの読み応えのある情報の公開は、
管理人様の努力と御苦労があってこそなのですね。
感銘を受けました。ありがとうございます。
今後も濃厚なブログを期待しています。
ぜひ頑張ってください^^
Unknown
亀井さん、こちらこそありがとうございます。
霧島方面は温泉の宝庫ですね。今年も初夏に行っておりますので、いま蔵出ししているネタが出し終えたら、霧島の温泉を取り上げるつもりでおります。今後とも宜しくお願い致します。