某大手宿泊予約サイトにて、手軽な価格で泊まれる鹿角エリアのホテルを探していたところ、朝食付きで大手ビジネスホテルチェーン並みのお安い料金を提示していた「湯瀬ホテル」が目に入ったので、こちらで一泊お世話になることにしました。東北道を走っていると、湯瀬PA付近で「湯瀬ホテル」の大きな建物が目に入ってきますから、以前から存在は知っていましたが、利用するのは今回が初めてです。なおこちらのホテルは、強酸性でおなじみの玉川温泉や新玉川温泉などと同資本(株式会社湯瀬ホテル)によって運営されています。
ホテルは12階建ての吉祥殿と7階建ての瑞祥殿という2棟から成り立っており、フロントは前者に、大浴場は後者に設けられています。フロントの奥には、県境の山中とは思えない立派でラグジュアリ感を醸し出しているラウンジが広がっていました。ラウンジの外には日本庭園もあり、散策できるのですが、この日はあいにくの天気だったので、外出はせずラウンジから眺めるだけにとどめました。
吉祥殿と瑞祥殿は米代川を挟んだ両岸に分かれて建てられており、両館は川を跨ぐ橋の長い通路によって連絡されています。浴場は橋を渡った対岸の瑞祥殿にあり、私が案内されたお部屋もこの瑞祥殿でしたので、宿泊中は橋をわたる事無く、エレベータの上下だけで大浴場へ向かうことができて便利でした。
橋を渡って瑞祥殿に入ったすぐのところにある小ホールには、温泉宿らしく卓球台が用意されていました。風呂上がりに浴衣で体を動かしたい方はぜひどうぞ。瑞祥殿のエレベータホール奥へ進むと女性大浴場、階段でB1Fへ下ると男性大浴場となります。
●客室
予約時に和室と洋室をチョイスできましたので、ベッドの方が熟睡できる私は迷わず洋室を選択しました。清掃が行き届いたツインルームには、冷蔵庫やお茶の他、ポットに入った冷水サービスも用意されており、風呂あがりの火照った体を冷ますには大変助かりました。またWifiも飛んでおり、普通にネットを閲覧する分でしたら全く問題のないスピードで利用できました。
お部屋にはバストイレも付帯しているのですが、お風呂は大浴場を利用したため、客室のお風呂は使いませんでした。でも事情があって大浴場を使えない方には、こうして客室にお風呂があると便利ですね。シティーホテル並みの室内設備と広さがあり、しかも後述する大きな温泉大浴場に入れるのですから、同価格帯のビジネスホテルに泊まるなら、こちらの方がはるかにコストパフォーマンスが優れているように思われます。
なお各客室には中・大サイズの浴衣が備え付けられているのですが、小あるいは特大サイズ希望の方向けに、客室棟の廊下には各サイズの浴衣が用意されていました。こうした小さな心遣いは、温泉旅館ならではですね。
●男性大浴場「仙人の湯」
さて本題のお風呂へと参りましょう。
エレベータでB1Fの浴室へ。なお男女で日替わりになるようなことはないらしく、女湯は1階、男湯はB1階で固定されているようです。
脱衣室はまるでホールのように広々としており、それでいてスタッフによるこまめなチェックも行われているため、手入れはぬかりなく、常に清潔感が保たれ、安心して使うことができました。衣類を収める籠は果たしていくつあるんでしょうか。ボリュームの大きな団体さんを収容することが前提に設計されたのでしょうけど、この日は個人客が泊まるばかりで、広い室内なそのキャパを持て余していました。尤も、そのような状況だからこそ、私は低い価格設定の恩恵に与れたわけですが。
化粧台も7~8台あり、アメニティもひと通り揃っています。
浴室は米代川に沿う形で奥行きの長い造りとなっており、手前側が洗い場ゾーン、奥側が入浴ゾーンというように、用途別にきちんと分かれています。床には十和田石が用いられているため、歩いた際に足裏へ伝わってくる感触が気持ち良く、また換気状態も良好で湯気の篭もり等も無いため、とても快適な室内空間が保たれていました。
脱衣室と同じ高さの床にサウナと水風呂、そして水飲み場が設けられており、洗い場や主浴槽等はそこからステップで1メートルほど下った低い位置にあります。
洗い場はひとつひとつがパーテーションでセパレートされており、各ブースにはシャワー付き混合水栓が計27基(うち立って使うシャワーが2基)設けられ、シャンプー類も備え付けられています。
洗い場ゾーンの先には、浴室の形に合わせる感じで、奥行きの長い主浴槽が据えられています。川側はガラス窓が連続していますから、日中でしたら照明要らずの明るさが確保されており、夜間でも屋内ゆえの圧迫感を払拭してくれました。
浴槽の両端は幅が約4.5mで、半円形に出っ張っています。この浴槽は前後で大小に2分割されており、手前側の大きな方は奥行き約10mで槽内には2段のステップがあり、最下段は結構深めで、私が底にお尻をつけようとすると頭まで潜ってしまいそうな深さがあります。2段目のステップに座ると丁度良い感じで肩まで浸かれました。また、後述する湯口のお湯がダイレクトに注がれるためか、湯加減もやや熱めで、体感で43~44℃ほどでした。
一方、奥側の小さな槽は奥行き約3.5mで、深さも湯加減も一般的で万人受けしそうな造りなのですが、ジェットバスが4本稼動しており、ちょっと騒々しかったかも…。
手前側の大きな槽の中央には、円筒形の温泉投入口が立ち上がっており、円筒の360度全方向からお湯が落とされていました。お湯は無色透明で、弱い芒硝感を有しています。円筒の上に載せられている丸いお皿状の蓋には、硫酸塩の析出と思しき白い結晶が付着していました。浴槽を満たしたお湯は、浴槽の縁からふんだんに溢れ出ていましたので、放流式の湯使いが行われているものと想像されます。
館内表示によれば温度調整のために加水されているそうですが、湯口のお湯は直に触るのが躊躇われるほど熱く、先述のように湯船も熱かったので、加水は必要最低限に抑えられているのかもしれません。また、消毒のために塩素系薬剤も投入されており、こちらに関しては、夜に入浴した際にはほとんど気になりませんでしたが、朝は若干のカルキ臭が漂っていましたので、状況や時間帯によって若干の差異があるのかもしれません。
湯船に浸かると、美人の湯の名に恥じないスルスルとした肌触りが得られ、その滑らかさに思わずウットリしてしまいました。
長い浴室の一番奥から屋外に出ると、取ってつけたような、猫の額ほどの小さな露天風呂が設けられていました。3~4人サイズの岩風呂で、浴室の規模と比較しちゃうと、どうしても拍子抜けな感は否めませんが、米代川にせり出たロケーションは素晴らしく、湯浴みしながら湯瀬渓谷の景色をのんびり眺めることができました。渓谷の風を感じながらの湯浴みはとっても爽快です。
露天風呂はロケーションもさることながら、お湯の質も内湯より優れているようです。石積みの湯口からは内湯とかわらない程の熱いお湯が供給されているのですが、浴槽のキャパに対する源泉投入量は、内湯よりも露天風呂の方に軍配が上がります。そのためか、浴槽に入った時に体感できるお湯の鮮度感も露天風呂の方が良好で、湯瀬温泉らしいスルスルとした滑らかな浴感とともに、シャキッとした爽快なフィーリングが全身を走りました。なお内湯同様こちらも放流式の湯使いかと思われます。
なお、以前にはフロントがある吉祥殿の11階にも浴場があったようですが、現在では館内案内から11階が消されており、11階の存在そのものが無かったことにされているようでした。どうやら閉鎖されてしまったみたいです。
全国各地を湯めぐりしていると、どうしても「大きなホテル=湯使いが悪い」という固定観念を抱いてしまうのですが、こちらのホテルではそんな先入観を覆してくれる、クオリティの高いお湯に浸かることができました。日帰り入浴は料金が高く設定されているので、ちょっと及び腰になってしまいますが、湯瀬温泉で綺麗且つ大きなお風呂をご希望でしたら、こちらの利用を検討されてみるのも宜しいかと思います。
湯瀬49源泉・湯瀬48-2源泉
アルカリ性単純温泉 58.4℃ pH8.9 100.0L/min(自然湧出) 溶存物質628.0mg/kg 成分総計628.0mg/kg
Na+:153.2mg(84.95mval%), Ca++:22.0mg(14.03mval%),
Cl-:32.4mg(11.56mval%), SO4–:300.4mg(79.42mval%), HCO3-:11.0mg, CO3–:11.0mg,
H2SiO3:87.2mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
消毒あり(衛生管理のため塩素系薬剤を使用)
JR花輪線・湯瀬温泉駅より徒歩5分(約450m)
秋田県鹿角市八幡平字湯瀬湯端43 地図
0186-33-2311
ホームページ
日帰り入浴14:00~20:00(最終受付19:00)
(宿泊客でも深夜帯は利用不可。詳しくはホテルのHPを参照のこと)
1000円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★
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