新穂高温泉 神宝乃湯

岐阜県

ようやく春の息吹が感じられる始めた時季だというのに、季節外れの記事が続いて申し訳ございません。もうしばらくネタの「在庫一掃」におつきあいください。昨年(2015年)初夏のこと。突き抜けるような青空に誘われて、日本に数多ある温泉地の中でも屈指の露天風呂密集地帯である奥飛騨の新穂高温泉へと向かいました。

 
皆様ご存知のように、新穂高温泉は穂高岳を源流とする蒲田川の谷に沿って温泉施設や旅館が細長く点在しているわけですが、今回私が向かったのは川沿いの温泉街から離れて山へ登った先にある鍋平高原です。この鍋平高原へは麓から第一ロープウェイで上って行けるほか、車でもアクセスすることができ、広い駐車場も整備されているため、私は車で直接向かいました。
高原には第1ロープウェイの鍋平高原駅と第2ロープウェイのしらかば平駅が設けられ、両ロープウェイの乗り換え地点にもなっているほか、観光客向けの食堂や足湯なども設けられ、美しく且つ峻厳な山稜を眺めながら、のんびりと寛ぐことができる、なかなか爽快な観光スポットになっています。

 
高温の温泉を活かした「温泉卵」の槽もありましたので、売店でこの卵を買って食べてみたのですが、お湯に浸かる卵を食べたり眺めていても、温泉ファンとしての欲求はちっとも満たされません。温泉は入浴してこそ楽しいものです。

 
そこで、ロープウェイ駅の向かい側にある新穂高ビジターセンター「山楽館」へと向かいました。このビジターセンター内には周辺の自然環境に関する解説や登山情報などのほか、お土産販売コーナーや食堂、そして温泉浴場「神宝乃湯」が併設されているんですね、私のお目当てはもちろん「神宝乃湯」です。

 
受付カウンター料金を支払って暖簾をくぐり、渡り廊下を歩いて男女別の浴室へ。

 
ウッディーで綺麗な脱衣室は使い勝手良好。ロッカーも設置されていますから、セキュリティ面も安心です。

 
こちらの浴場は観光施設的な色彩が強く、お風呂は内湯が無く露天のみの構成です。穂高の山々の緑に囲まれた清々しい環境のもと、木材で組んだ屋根が建てられ、その下に大きな岩風呂が設けられています。近くには第2ロープウェイの索道が山の上へ向かって伸びており、一定時間ごとにロープウェイのゴンドラが上下する光景も見られます。
排水が環境にもたらす影響を考慮し、石鹸やシャンプーなどの使用が禁止されているため、構内にシャワーなど洗い場は無いのですが、その代わり掛け湯用の温泉のつくばいが設置されていますので、ここでしっかり体の汗や汚れを落としてから、湯船へと向かいました。

 
岩風呂は大小に分かれており、いずれも立派な岩に囲まれ、底面にはタイルによって模様が描かれています。奥に位置している小浴槽は、最奥の岩からお湯が落とされており、ちょっと熱めの湯加減になっていました。小浴槽といっても、10人は優に入れそうなサイズを擁しています。

 

一方、脱衣室側にある大きな浴槽は加水がしっかり行われているため、万人受する41℃前後の入りやすい湯加減に調整されていました。屋根が頭上を覆っているため、残念ながら山稜を眺めにくい状況にあるのですが、さすが高原だけあって空気が美味しくて爽快ですから、とても快適な湯浴みが楽しめます。特に夏季は下界の猛暑を忘れられるほど涼しく爽やかで、しっかり湯浴みをしても湯上がりの汗が気になりません。
館内表示によれば、加水は行われているものの、加温循環消毒のない放流式の湯使いであると表記されており、私が実際に利用してひと通り観察しても、その表記に嘘偽りはないかと思われます。大小両浴槽とも浴槽縁からの溢れ出しは無く、底から立ち上がっているオーバーフロー管から排湯されていました。

 
小さな浴槽は岩からお湯が落とされていましたが、大きな浴槽では太い木製の樋から注がれており、クリーム色に染まったその樋の中を覗いてみますと、樋の内部で加水が実施されていることが確認できました。
お湯は無色透明ですが、わずかに灰色や翠色掛かっているようにも見え、湯中では白い湯の花が浮遊しています。お湯からは火山の噴気帯みたいな硫化水素臭がしっかり放たれているほか、口に含んでみると基本的にはタマゴ味ですが、ややゴムっぽく、また弱いながらも苦味を感じ取れました。匂いや味の面で硫黄の特徴はよく現れているものの、浴感としてはアッサリしており、弱いツルスベで癖の少ない優しいフィーリングでした。なお、ここで使っている温泉は麓の新穂高温泉街の中尾地区(おそらく「中崎山荘」付近)から引湯しているんだそうですが、岐阜県温泉協会公式サイトの「第14話 統計から見た岐阜県の温泉」によれば、新穂高温泉の中尾地区では蒸気造成泉を使っているそうですから、私が実際に体感した浴感や温泉協会の文章から推測するに、おそらくこの温泉も蒸気造成泉であろうと思われます。でも造成泉ならではのアッサリとした優しさが心地よく、硫黄感もしっかり主張しており、また高原の空気も清々しいので、この界隈へ来た際には入浴する価値が十分にあるかと思います。場所柄、観光客はもちろん、登山客の利用も多く、私の訪問時も山男たちが下山後の疲れを癒していました。

奥飛騨観光開発3号泉(高山市奥飛騨温泉郷神坂字巾平710-21)
単純硫黄温泉 79℃ pH6.60 140L/min 溶存物質0.548g/kg 成分総計0.549g/kg
Na+:88.9mg(74.4mval%), Ca++:13.0mg(12.5mval%),
Cl-:116.5mg(57.0mval%), HS-:0.4mg, S2O3–:3.0mg, HCO3-:103.4mg(29.4mval%),
H2SiO3:172.5mg, H2S:1.2mg,
(平成21年4月13日)
加水あり(源泉温度が高いため)

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高  地図
0578-89-2254(新穂高ビジターセンター「山楽館」)
「施設のご案内」(新穂高ロープウェイ公式サイト内)

9:30~15:30(受付15:00まで) 季節により変動あり
600円
石鹸・シャンプー類など使用禁止、ロッカーあり、ドライヤー見当たらず

私の好み:★★★

コメント

タイトルとURLをコピーしました