前回記事の続編です。
重慶でも屈指の人気を誇る「融匯温泉」。
立派な受付を経て広い更衣室で水着に着替えた後は、実際にお風呂へ入ってみましょう。
この融匯温泉について結論から申し上げると、日本の温泉とは全くイメージが異なり、端的に表現すれば温浴テーマパークと言うべき施設です。日本人が温泉に求めるものと、中国人のそれとは、こんなに違うものかと強いカルチャーショックを受けることでしょう。従いまして日本の温泉情緒を求めてはいけません。ここでは自分の固定概念を捨て、ご当地の文化を素直に受け入れて楽しみましょう。
更衣室を抜けた先にある屋内温水プール。すべての利用者はまずここへ入り、更に広大な園内にある各種の浴槽やプールへ向かうことになります。巨大な温室みたいな空間には大きなプールが設けられ、プールサイドにはたくさんのデッキチェアなどが並べられていました。気候や気温を気にせず快適に水遊びできる空間です。プールには中華圏の方が大好きな打たせ湯もたくさん設置されていました。なおプールに張られているのは温水ですが、はたして温泉であるかは不明です。
ガラス張りの屋内から出てみました。
屋外の露天ゾーンは大変広く、公園のように設計された敷地の中に多種多彩な浴槽やプールが設けられています。私が訪れた時は梅の花が咲いていました。
なお融匯温泉が擁する浴槽やプールは本当に多いのですが、全ての浴槽を紹介していたらキリがないので、ここでは数を絞って取り上げさせていただきます。
園内にはお茶のサービスが用意されており、もちろん自分で注いでも良いのですが、適宜スタッフが循環しながら持ってきてくれますから、余計なことは気にせずノンビリと過ごしましょう。なお園内を循環するスタッフは、お茶を配る傍ら、入浴中のお客のスリッパをこまめに消毒しつつ並べ直してくれます。並べ直すのは良いとしても、いちいち消毒して何の意味があるのやら。お客さんやお風呂の衛生面に気を配っているよというポーズなのかもしれません。
たくさんあるお風呂は、機能面などが異なるのみならず、テーマが設定された個性的なお風呂もあり、たとえば上画像で写っているお風呂は、周囲に唐辛子や調味料などのオブジェが周囲に配置され、お湯が赤く着色されていました。ご当地名物の火鍋など何かの料理をイメージしているのでしょうか。
こちらは中国のみならず、日本やタイ、マレーシアなどのアジアの各地域で大変人気な足湯。たまたま撮影時は誰もいなかったのですが、その後たちまち人で埋まり、利用客のお喋りで大変賑やかになりました。なお画像はありませんが、庫の足湯の近くには中国で人気のドクターフィッシュ槽もあり、魚に足の角質を食べられている若い女性客がキャーキャーと歓声を上げていました。
足湯やドクターフィッシュなどの各浴槽がある階段ゾーンを上がってゆくと、上画像のような広大な屋外温水プールが目に入ってきました。プールと言うより入江みたいですね。
入江のようなプールの奥には、いくつもの薬湯が木立の中に点在しています。静かで緑豊かな良い雰囲気です。各浴槽で異なるフレーバーや漢方薬の入浴剤を溶かしていますが、ここも全てを取り上げたらキリがありませんので、代表的なものをいくつか。
(1)には青いお湯、その奥に黄色のお湯が写っていますが、どんな入浴剤だったか失念。
(2)は緑茶のお湯。
(3)は「活地通絡湯」と称するお風呂で、何かしらの漢方が入っていたはず。
(4)はチェダーウッドのアロマオイルが注がれた浴槽。
漢方に関しては園内にあるこの「煎薬房」で調合しているんだそうです。
こちらは「木桶湯」。いわゆる樽風呂ですね。
露天ゾーンで私が気になったのが「純湯池」。つまり何も溶かしていないお湯というわけですね。
日本の露天風呂をイメージして作ったと思しき、東屋つきの岩風呂です。
何も溶かしていないのに薄ら黄色く笹濁っているのですから、おそらくこのお湯は温泉なのでしょう。静かで広々しており、湯加減も良いので確かに気持ちは良いのですが、温泉っぽさがいまいち感じられません。良い温泉が持つシャキッとした感覚がお湯から伝わってこないのです。
緑豊かな園内の中を歩きながら・・・
この記事の冒頭でご紹介した屋内プールの近くまで戻ってきました。屋外を散策する際、上画像で写っているこの「四季浴」と称する浴槽がちょっと気になっていたのです。円を4分割したこの浴槽は、淡く濁るお湯を湛えており、特にこれといった装飾も無いので、園内の他の浴槽と比べるとかなり地味で目立たないのですが・・・
その中心に立てられている温泉の紹介を読んでビックリ。
「原湯池 未過濾処理(原汤池 未过滤处理)」、つまり源泉のお湯でろ過処理していないと書かれているではありませんか!!
私が求めていたのはこうした浴槽、つまり源泉に入れる浴槽です。
温泉の説明プレートが立っている真下に温泉の吐出口があり、触れないほど熱い温泉が噴き上がっていました。
吐出口の周りは温泉成分の付着により濃い赤茶色に染まっており、浴槽のお湯は上述のように緑色を帯びた薄い黄土色に濁っています。
湯口から噴き出ているお湯を、スタッフが配って回っているお茶の紙コップに掬ってテイスティングしたところ、かなり重く硬い味がしました。おそらくカルシウムやマグネシウムが多いのでしょう。また湯口周りを赤く染めていることからも想像できるように、金気味もはっきりと感じられました。
4つの扇形に分けられた各槽は4~5人ほど入れそうな大きさがありますが、地味な存在感ゆえかあまり人気が無く、混雑することありません。でも私のようなお湯の質にこだわる者にとって、この浴槽は本当に素晴らしく、広い敷地に数多の浴槽があるにもかかわらず、私はこの源泉浴槽を見つけてからは、ずっとここに入り続けました。お湯からは塩化土類泉らしい土気味と匂いがはっきりと感じられ、湯中ではしっかり引っかかる浴感と、肌をしっとりとコーティングする感触が得られます。そしてよく温まります。実に良いお湯です。
退館時には、ちょうど受付フロントの真裏に位置しているこの窓口で精算します。
入浴利用のみだった私の精算金額は169元! 日本円換算で2500~2600円というお高めな料金設定ですが、それでもたくさんのお客さんで賑わっていましたから、現在の重慶市民にとっては決して高くなく、むしろ支払う価値のある温泉施設と認識されているのでしょう。いや、東京圏の大規模温浴施設で比較しても、お台場の大江戸温泉より高いものの、横浜みなとみらいの万葉の湯と同等であり、それより高い後楽園のラクーアに比べたらはるかにコストパフォーマンスが良いので、日本の物価基準で考えても妥当な料金設定なのかもしれません。
私個人としては、1つだけでも気に入った浴槽と出会えてホッとしました。
硫酸钙镁泉(カルシウム・マグネシウム-硫酸塩泉) 54℃ pH7.6 5000㎥/day
(温泉の湧出量が日量5000㎥ということは、5000÷24H÷60min=毎分3.472㎥=3472ℓとなります。ものすごい量ですね)
現地までのアクセスは前回記事をご覧ください
重慶市沙坪覇区梨樹湾(重庆市沙坪坝区梨树湾)
ホームページ
169元(日によって異なるようです)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーなど完備
私の好み:★★
(源泉そのままの「四季浴」は★★★)
コメント
Unknown
なるほど、いろいろな意味で今の中国らしい温泉施設ですね。
重慶で大江戸温泉より高いのだから、隣国の方々からしたら日本のものはなんでも安いでしょうね。
学習の早い人たちなので、源泉の価値もすぐにわかるようになってくれるんじゃないでしょうか。
Unknown
Luntaさん、こんばんは。
おっしゃるように、あらゆる面で中国らしい施設でした。たしかに料金設定が高めなのですが、それでも多くのお客さんでにぎわうのですから、現地の経済水準は相当上がっているんですね。そして確実に且つスピーディーに中国はいろんなことが進んでいることを、この温泉でも実感しました。温泉だけをとっても、良い面も悪い面も、いろんなことが一気に来るのではないかと思ってしまいます。