大鰐温泉 ヤマニ仙遊館 前編(部屋・食事)

青森県

(2020年11月訪問)


津軽の奥座敷として長い歴史を有し、藩政時代には湯治場として歴代藩主も訪れていた大鰐温泉。そんな大鰐にあって現役最古の旅館が明治5年創業の「ヤマニ仙遊館」です。数年前に一旦休業してしまいましがが、その後復活を遂げ、歴史の風格漂う老舗旅館として立派に営業しています。伊藤博文や後藤新平といった明治大正期の政治家、そして葛西善蔵や太宰治といった津軽出身の作家など、多くの著名人が泊まった歴史ある宿に、私も一晩お世話になりました。


宿の建物は国の登録有形文化財に登録されているんですね。文化財に泊まれるというだけでもワクワクしちゃいます。


伝統的な建築様式と戦前のモダンな雰囲気を合わせた、趣きたっぷりの館内。
快適に過ごせるようしっかり改修されており、廊下も実に美しく、館内を歩くだけでも気分が高揚します。


館内に掲示されている当地の古い絵地図です。現在大鰐温泉といえば、それこそ大鰐町の中心部に広がる温泉街をまるごとひっくるめて「大鰐温泉」と称していますが、この地図によれば、かつて平川の左岸は「大鰐」、右岸は「蔵館」というように地名が分かれていたんだそうです。つまり現在の「若松会館」や「青柳会館」といった公衆浴場、そして中小規模の旅館の多くが位置するエリアは昔から大鰐と呼ばれ、この「ヤマニ遊仙館」や「大湯会館」などは蔵館温泉に属するわけです。おそらく以前は川を隔てた別々の温泉地として、それぞれ別個の源泉を使っていたものと思われますが、現在大鰐温泉は複数の源泉から集めたお湯を集中管理し、平川両岸の各施設へ配湯していますから、敢えて名称を分ける必要は無いでしょう。なお当地が蔵館だった頃から「ヤマニ遊仙館」は旅館業を営んでいたそうです。


今回宿泊したお部屋は川に面した「萩の間」。8畳の和室です。日本旅館としては一般的な造りであり、かつ現代的なニーズに応えるべくエアコン・テレビ・wifiなども完備されています。なお洗面台やトイレなど水回り系は共用です。


お部屋の窓からは、宿の庭と平川の流れを一望。


今回は2食付きのプランで利用させていただきました。
夕食は蔵を改築した「KURA」でいただきます。なんてストレートなネーミングだこと。


蔵を改造した店内は、1階が厨房で、2階と3階が客室です。レトロ調の内装や装飾が特徴的。


2階には昔懐かしいレコードプレーヤーがオブジェとして置かれていました。


3階の席はどうやら貸切のようです。太宰治の写真がいかにもご当地らしいですね。
私が大好きで何度も読み返した太宰の小説『津軽』の中で、大鰐に関しては「私も少年の頃あそびに行ったが、浅虫ほど鮮明な思い出は残っていない(中略)大鰐の思ひ出は霞んではゐても懐しい」と述べていますが、氏は二十歳の頃にカルモチンによる心中未遂の後、静養のために大鰐を訪れており、おそらくその時にこの旅館で過ごしているのではないかと思われます。


この日の献立は、生ハムつきサラダ、ヒラメのえんがわとサーモンの刺身(脂がのっていて非常に美味)、そして豚肉の鍋といったラインナップ。


出汁がきいた鍋には、ドンコ(しいたけ)とご当地名物の大鰐もやしが入っており、ここへ豚肉を入れるわけですが、お肉は勿論、ドンコの強い風味に大鰐もやしのシャキシャキとした食感が加味されてとっても美味でした。鍋は具を食べた後に、ご飯と生卵を入れて雑炊にできるんです。この雑炊も最高でした。


翌朝の朝食は本館1階の大広間で、お庭を眺めながらいただきます。


「津軽のカッチャおかず」と題された朝食の献立は、サトイモの煮物、ニンジンの子和え、大鰐もやしの炒め物、ナスの揚げ浸し、炒り豆腐、津軽付けといった野菜系中心のおかずの他、塩鮭、温泉卵、白米(つがるロマン)、お味噌汁(川の対岸で醸造しているご当地のマルシチ味噌)、リンゴジュースという彩り豊かでバランスの良い内容です。ちなみにカッチャとはお母さんのこと。津軽のおふくろの味ってこういう感じなのかな、と心豊かに想像しながら美味しく完食致しました。個人的には津軽の郷土料理であるけの汁が出てくると尚良かったのですが、あれは冬の味覚なので、もし提供していただけるのであれば厳冬期に再訪してみたいものです。

さて、今回の記事はここまで。
次回記事ではお風呂の様子を取り上げます。

次回に続く。

コメント

  1. ぬる湯マスター より:

    Unknown
    こんばんわ^^。
    あらあら、何ともまぁ素敵なお宿ですな^^!
    特にお食事が素晴らしい。ドンコ汁、良いですね~!
    当方、ただ今最愛のインコが迷子になってしまい、
    毎日泣きながら過ごしておりました。少し気分も良くなったので、
    久しぶりに記事を読み始め、楽しい気持ちになれました。
    ここ10日ほどは、チラシを撒いたり、チラシを貼ったり、、、
    今週末は母親を連れて湯河原なので、気を紛らわせたいですね。
    温泉に入り、爆食いをして来ようと思っております。
    K-I殿に、負けてられないですね^^b

  2. K-I より:

    Unknown
    ぬる湯マスターさん、こんにちは。
    歴史を感じつつ、良いお湯と美味しい料理をいただけ、とても良いお宿でした。
    週末の湯河原も是非楽しんでお出かけください。
    インコが戻ってくるといいですね。

  3. Lunta より:

    Unknown
    ご紹介のお宿が素敵なので、また大鰐もやしが食べたくて、恒例のパス旅で利用させていただき、K-Iさんと全く同じお部屋に宿泊しました。
    食事も端正なお風呂もとても良くて、大鰐に宿泊もいいですね。
    こちらのブログのおかげでいい温泉やお宿に出会えて、いつもながら感謝です。

  4. K-I より:

    Unknown
    Luntaさん、こんにちは。返信が遅くなり申し訳ありません。
    大鰐のこの宿でお泊りになったんですね。風呂良し食事良しで、私もこの宿では良い時間を過ごすことができました。あのもやし、東京で食べたいものですが、品質管理の問題で無理なのでしょうか。Luntaさんの旅のお役に立てて幸いです。
    我々も年末に庄内鶴岡へ出かけましたが、その時にはLuntaさんのブログを大いに参考にさせていただきました。こちらこそ感謝でございます。

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