千葉 弁天鉱泉 後編(お風呂)

東京都・埼玉県・千葉県

前回記事の続編です。

房総の海の幸をメインにした絶品料理に舌鼓を打って大満足の私。
続いて待望のお風呂に入ります。

●露天風呂(非鉱泉)

まずは露天風呂へ。ひとつしかないので、時間帯によって貸切利用、男性の時間、女性の時間などに分けられていたように記憶しているのですが、記憶違いでしたらごめんなさい。


これが露天風呂の全景です。
なかなか立派な設えじゃありませんか。


東京湾を見下ろす絶景のロケーション。視界が良ければ海の彼方に富士山も眺められるらしいのですが、前回記事でも述べたように、訪問日は春霞が酷くて視界が悪く、富士山どころか対岸の三浦半島ですら霞んで僅かに見える程度。こればかりは自分の不運を恨むほかありませんね。でもこの景色だけで十分ブリリアント。


この大きな露天風呂に張られているお湯は鉱泉ではない無色透明無味無臭の真湯。お湯自体にこれといった特徴はありませんが、この雰囲気、このロケーションを有する露天風呂に入れるだけでも非日常の享楽を得られ、日頃の憂さが綺麗さっぱり雲散霧消していきます。開放感って大切ですよね。

●内湯(鉱泉)

続いては内湯です。当地の極めて特徴的な鉱泉に入るのでしたら内湯を利用することになります。
なお内湯のお風呂は時間により男女の暖簾が入れ替わりますのでご注意を。
この付近はおろか房総半島に火山や地熱地帯なんて無いのに、内湯の入口が並ぶ廊下には鉱泉に含まれる硫黄由来の濃いタマゴ臭が漂っています。


内湯の浴室にはゴツゴツとした岩があしらわれており、非日常な空間を演出しています。これを見た私は房総の地磯や鋸山などを連想しました。


お風呂を別アングルから写してみました。窓に面しているため日中は明るい入浴環境が生み出されています。


浴槽には加温された鉱泉が張られています。鉱泉に含まれる硫黄分の影響により、その時々によって青白くなったり白濁したり透明になったりとお湯の色が変化するそうですが、私の利用時はほぼ上画像に写っているような色合いでした。


浴槽には非加温冷鉱泉の蛇口もあり、開けてみると強いタマゴ臭と共に冷鉱泉が吐出されます。マニア的には非加温鉱泉に入ってみたく、浴槽のお湯をそれに近い状態へ寄せたかったのですが、あまり出し過ぎるとぬるくなって他のお客さんに迷惑をかけるため、程々のところで非加温鉱泉の栓を締め、肩までしっかり浸かって湯浴みさせていただきました。タマゴ臭を漂わせるお湯は良い感じに滑らかなツルスベ感があり、全身がしっかり温まります。良い湯です。


内湯のお風呂よりはるかに衝撃的なのが、浴場裏手の屋外にある龍の手水です。
上述の通り、内湯の廊下にはどこからともなく放たれたタマゴ臭が漂っているのですが、内湯の廊下から露天風呂へ出る引き戸を開けた途端にその匂いが俄然強烈になったので、これは一体何なんだと匂いの元を探したら、この手水にたどり着いたのです。


龍の口からチョロチョロと落とされているのは湧出したままの冷鉱泉です。手水鉢の内側には白い湯の華が無数に付着してヒラヒラしており、尋常ではないほど強いタマゴ臭をあたりに放っています。口から落とされる冷鉱泉を手に取って口に含んでみますと、ほろ苦さを伴う濃いタマゴ味が感じられます。また鉱泉を腕に塗ってみるとはっきりとした滑らかなツルスベ感が得られました。それにしてもこんなに強いタマゴ感を有する鉱泉もなかなか珍しいかと思います。分析表によれば総硫黄33.8mgという驚きの多さ。そりゃ硫黄由来の匂いや味を強く感じるのは当然ですよね。

ところで、万座温泉や那須湯本温泉など火山活動の影響を受ける温泉地で硫黄感が強いのは理解できますが、なぜ火山とは無縁なこの東京湾岸の内房エリアで濃い硫黄の鉱泉が存在するのでしょうか。海辺等に茂っていた植物が枯れて蓄積され微生物等により分解されてゆくと、褐色の黒湯やモール泉をもたらす腐植質へと変化します。こうして生まれる鉱泉や温泉は千葉のみならず神奈川や東京の東京湾岸でも多数見られ、その多くは化石海水型の食塩泉として湧出しています。
一方、いろいろな生物の死骸が海底に沈んで溜まってゆくと、微生物などによって分解される過程で硫化水素が発生します。あるいは、酸素が行き届かない地中深くにおいて、地下水に含まれる硫酸イオンは嫌気性細菌(硫酸還元菌)によって硫化水素に変えられます。おそらくこうした理由によって硫黄の多い弁天鉱泉が生まれたのではないかと、私は勝手に推測しています。火山とは無縁なのに硫黄を多く含む冷鉱泉といえば、この弁天鉱泉の他には秩父地方に点在する鉱泉や秋田県金浦の「学校の栖」などが挙げられますが、いずれもおそらく嫌気性細菌の働きによって生まれたのではないかと考えられます。

そんな屁理屈はともかく、極上の海の幸と、極めて特徴的な硫黄たっぷり冷鉱泉は、温泉ファンのみならず、多くの方々に楽しんでいただけること間違いありません。お宿を営んでいるのがご高齢のご夫婦なので、いつまで営業を続けて下さるのか少々不安なのですが、是非とも行ける時に行ってみてください。

小浦弁天温泉
含硫黄-カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩冷鉱泉 14.2℃ 溶存物質1.03g/kg 成分総計1.04g/kg
Na+:62.1mg(21.35mval%), Mg++:46.2mg(30.04mval%), Ca++:120.1mg(47.39mval%),
HS-:19.2mg, S2O3–:11.9mg, SO4–:225.4mg(34.69mval%), HCO3-:410.3mg(49.69mval%),
H2SiO3:80.4mg, CO2:2.7mg, H2S:2.7mg,
(平成31年1月4日)
加水無し
加温あり
ろ過あり(衛生管理上髪の毛や浮遊物を取るため)

千葉県南房総市小浦487
0470-57-2528
ホームページ

日帰り入浴(事前予約制)2000円/1時間
利用可能時間は施設へお問い合わせください。

私の好み:★★★

コメント

  1. プンタ より:

    新しいページもスタイリッシュでいいですね
    何よりシンプルで見やすい!
    私のK-Iさんに対する勝手なイメージ。
    案件・群れ・しがらみを避ける孤高の人。
    (協調性がないと言ってる訳ではありません)

    • K-I より:

      プンタさん、ありがとうございます。
      プンタさんの引っ越し先も見やすくて良いですね。gooブログから引っ越しして結果的に正解だったのかもしれませんね。
      >案件・群れ・しがらみを避ける
      おっしゃる通り! 別の言い方をすれば天邪鬼なのかも(^^)
      温泉関係のSNSを積極的に投稿している方々とお話しする機会があり、みなさん収益化に齷齪しているとのことでした。
      私は収益化なんて考えたことが無かったので(amazonのアフィリエイト以外)、正直なところビックリしました。
      個人的には単独行動が好みです。団体行動は気を使いすぎて疲れちゃいます(^^)
      不器用な性格です(^^) 困ったもんです。

      • プンタ より:

        コメントに絵文字つけたんですが消えてる(笑)
        私は15年使っていたgooブログの方が未だに良かったなーと思ってますが、こればかりは仕方ない事。
        そうですね!結果的に良かったと思える様にしなきゃです!
        私は雑多系の文章しか書けないので、せめてブログのデザインだけはシンプルにと思って選びました。(^^;
        本題に関係ない話ばかりですいません。
        今後もよろしくお願いします!

        • K-I より:

          >プンタさん
          確かに使い慣れているツールから離れるのはツライですよね。私としては新ブログでのリンクの張り替えが面倒です(⁠+⁠_⁠+⁠) コツコツ頑張ります。
          プンタさんのブログは青森の温泉を得る貴重な情報源なので、これからも活用させていただきます。

タイトルとURLをコピーしました