温泉天国の青森県にあって、県下第二の都市である八戸周辺はその恩恵にあずかりにくい地域でありますが、決してゼロというわけではなく、それなりに温泉施設が点在しております。そこで今回は、新幹線の八戸駅を擁する尻内地区の西側にある「熊の沢温泉」を取り上げてみます。県道20号に沿った場所に立地しており、広い駐車場が用意されています。建物右手にそびえ立つ2本の煙突が目を惹きますね。
玄関ではクマの大きなぬいぐるみがお出迎え。2台置かれた券売機で料金を支払い、受付のおばちゃんに券を手渡します。オープンしてまだ数年しか経っておらず、館内は明るくて綺麗です。ソファーや自販機が置かれたロビーも広々。
脱衣室も広く、棚やロッカーもたくさん用意されているので、使い勝手良好です。また室内には扇風機が2台あるので、湯上り後のクールダウンも問題なしです。更には青森県の銭湯では珍しくドライヤーが無料で使えるのも嬉しいところ。
浴室のレイアウトは青森県の温泉銭湯でよく見られるスタイルを踏襲しており、すなわち手前側にたくさんの水栓が並んでいる洗い場を設け、その奥に浴槽を数種類配置しています。大きな窓と高い天井のお陰で、室内空間ながらも開放的です。洗い場には壁際と室内中央の島に分かれて計31箇所用意されており、一部を除いて、これまた青森県の銭湯では標準的な固定式シャワーが取り付けられています。
浴室内の浴槽は計5つあり、脱衣室側から見て左から、電気風呂、ぬる湯、あつ湯、炭酸風呂、(露天風呂への出入口を挟んで)水風呂という順に並んでいます。この他浴室入口付近には上がり湯槽があったり、またサウナもあったりと、実にバラエティーに富んでおります。これらの浴槽のうち、上2枚の画像に写っている電気風呂・ぬる湯・あつ湯の3つには源泉が使用されていました。
あつ湯の浴槽は内湯で最も大きい10~12人サイズで、42℃くらいの湯加減に設定されており、お湯は槽内より供給され、入浴するためのステップより溢れ出ています。その左隣りのぬる湯槽には、両者を仕切る壁にあけられた穴を通じてあつ湯槽からお湯が流れ込んできており、40℃前後の湯加減がキープされ、ここでもステップよりお湯が溢れ出ています。
ぬる湯の浴槽には生の冷たい源泉が出てくる蛇口があり、これを開けることによって浴槽の生源泉率を高めることができるので、この時の私は他のお客さんに迷惑が及ばない程度に(ぬるすぎない程度に)この源泉をドバドバ注いで、槽内のお湯の鮮度を高めながら入浴しました。いろんな浴槽がある中でも、生源泉に触れることができるのはここだけかもしれません。
この蛇口でいつものようにテイスティングしてみますと、見た目は薄い麦茶色の透明で、ほぼ無臭ながら重曹味やアルカリ性泉的な微収斂を有していました。また、湯船に浸かるとヌルヌルを伴うツルスベ浴感がはっきりと得られ、肌を擦るととても気持ち良い感触が楽しめました。見た目はモール泉的なお湯であり、浴感もまさにその系統のものですが、匂いや味に関してはかなり弱くてマイルドな感じでした。
屋外に出ると立派な露天風呂も設けられており、屋根掛けされた7~8人サイズの岩風呂へ加温された温泉が供給されていました。この露天風呂は八戸駅の西側に位置する高台に設けられており、目の前に塀が立てられているので眺望こそ期待できませんが、水平方向から上方の視界を遮るものが無く、露天の区画自体にも余裕があるので、意外にも開放感が得られました。
湯口から注がれるお湯は44℃くらいに加温されており、湯船では万人受けする42℃前後となっていました。内湯同様に露天風呂でも放流式の湯使いを実践しており、ステップから湯船のお湯がしっかりオーバーフローして、手前の床で茶色いさざ波を立てていました。溢れ出ているお湯の量は内湯よりも多く、湯使いに関してはここが一番良かったように記憶しています。露天のお湯では、内湯ではあまり見られなかった茶色い浮遊物が目立っていましたが、これって投入口における湯の華キャッチャーの有無によるものなのでしょうか。
明るい浴室や開放感のある露天風呂で多様なお風呂を楽しめ、しかも加温しているにもかかわらず贅沢にもお湯を放流式にしているのですから、実に素晴らしい浴場ですね。ネット上の情報によればいつもたくさんのお客さんで賑わう人気の浴場なんだそうですが、人気を博するのも十分に納得できます。気持ち良い浴感と湯上り後の爽快感を存分に楽しませていただきました。
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 26.7℃ pH記載なし 溶存物質2.038g/kg 成分総計2.038g/kg
Na+:585.9mg(82.81mval%), Ca++:69mg(11.18mval%),
Cl-:749.8mg(69.44mval%), Br-:1.4mg, I-:0.1mg, HCO3-:409.1mg(22mval%), CO3–:23.4mg,
H2SiO3:76.2mg, CO2:0.0mg,
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
加水・循環ろ過なし(消毒に関して記載なし)
※館内に掲示されていた分析表には誤記(タイプミス?)が目立っており、例えばアンモニウムイオンをN+と記したり(正しくはNH4+), 第一鉄イオンをF+(同じくFe2+), 塩化物イオンをC-(Cl-), 臭素イオンをB-(Br-)と表記しているので、一応上記では用語を修正した上で分析表のデータを抜粋しましたが、その記載内容はあまりあてにならないかもしれません。
八戸駅(西口)より徒歩20分(1.6km)
青森県八戸市尻内町熊ノ沢34-251 地図
0178-27-0004
7:00~22:00
420円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤーあり
私の好み:★★★
●スーパーホテル八戸
全国にチェーン展開しているリーズナブルなビジネスホテル「スーパーホテル」は、多くの店舗で温泉浴場を導入しており、温泉の存在を大きなアピールポイントにしていますが、八戸の「スーパーホテル」でもやはり温泉浴場が設けられており、「天然温泉 三社の湯」と称しています。尤もホテルの敷地内に源泉があるのではなく、八戸の場合は今回の記事で取り上げている「熊ノ沢温泉」よりローリーで運搬しているので、ここではついでに「スーパーホテル八戸」の様子も簡単にレポートさせていただきます。
造りとしてはビジネスホテルの大浴場そのもので、実用本位一辺倒のものですが、脱衣室では間接照明を用いて落ち着いた雰囲気を醸し出したり、ダイソンの羽根のない扇風機を備え付けたり、アメニティー類もそれなりに揃えたりと、快適性を向上させようとする意気込みは十分に伝わってきます。
また宿泊者専用だけあって浴室はさすがに綺麗に維持されており気持ち良く使えましたが、全体的にかなり小さな造りして、たとえば洗い場は3人分しかなく、また浴槽も5~6人が入れる程度の容量しかないので、ホテルのキャパを考えると、時間帯によっては相当混雑するのではないかと思われます(私は深夜と早朝しか利用していないので、混雑についてはあくまで推測にすぎませんが…)。
浴室の床には十和田石のような材質の石板タイルが敷かれており、足元からは気持ち良い感触が伝わってきました。また浴槽脇にある石のオブジェからはヌル&ツルとした感触を伴う25℃くらいのぬるいお湯がチョロチョロ流れていたのですが、これって温泉水を流しているのでしょうか、あるいは単なる飾りなのでしょうか。
湯船のお湯は槽内で供給と吸引が行われ、しっかり加温・循環・消毒が施されており、無色透明のお湯からは塩素臭がプンプン漂っています。私が苦手とするお湯でありますが、しかしながら「腐っても鯛」と言っては大変失礼ですが、入浴しますとちゃんとしたツルスベ浴感が得られるので、このお湯は単なる沸かし湯ではなく、れっきとした温泉水であることが体感できました。
ただ、このお湯に関してよくわからないのが、採取元であるはずの熊ノ沢温泉の現地で掲示されていた分析表と全く異なる泉質名やデータが、この浴場で掲示されている分析表に記されている点です。三社の湯の給湯口で採取したお湯を分析しているらしく、お湯の使用状況の違い(消毒や加水・加温など)によって数値に変化が生じるのは当然としても、「三社の湯(スーパーホテル)」では完全な重曹泉型のアルカリ性単純泉となっており、両者を比較しても、たとえ加水などがあった後だとしても、とても同じ源泉であるとは思えません。分析日の相違によって泉質が異なっていたのか、お湯の使用状況によって成分構成に大きな変化がもたらされたのか、あるいは熊の沢温泉という名前であるものの別の源泉なのか、そのあたりの事情はよくわかりません。とはいえ、あんまり考えすぎると地下鉄漫才の春日三球照代みたいに眠れなくなっちゃいますから、細かいことは忘れて、次回の記事にとりかかることにします。無責任でごめんなさい。
三社の湯の給湯口での数値
アルカリ性単純泉 26.7℃(湧出地) 溶存物質0.723g/kg 成分総計0.723g/kg
Na+:188.0mg(95.79mval%),
Cl-:26.9mg(8.86mval%), Br-:0.0mg, I-:0.0mg, HCO3-:358.0mg(68.41mval%), CO3–:37.3mg,
H2SiO3:69.7mg, CO2:0.0mg
青森県八戸市十一日町58-7
0178-47-9000
ホームページ
この浴場は宿泊者専用です。立ち寄り入浴はできません。
コメント
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本八戸あたりで宿泊するのに、温泉施設のあるホテルかみちのく温泉に行くか迷っていました。熊の沢温泉のお湯と聞いて飛びつきましたが、やはり循環消毒なんですね。仕方ないですが。。。。やっぱりみちのく温泉に行こうかな。。。。
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本八戸あたりで宿泊するのに、温泉施設のあるホテルかみちのく温泉に行くか迷っていました。熊の沢温泉のお湯と聞いて飛びつきましたが、やはり循環消毒なんですね。仕方ないですが。。。。やっぱりみちのく温泉に行こうかな。。。。
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本八戸あたりで宿泊するのに、温泉施設のあるホテルかみちのく温泉に行くか迷っていました。熊の沢温泉のお湯と聞いて飛びつきましたが、やはり循環消毒なんですね。仕方ないですが。。。。やっぱりみちのく温泉に行こうかな。。。。
Unknown
小杉さん、こんばんは。私はコスト面重視でスーパーホテルに泊まり、実際に浴場を利用する時点ではじめて、熊の沢温泉のお湯を運んでいることを知りました。施設の性質上、循環消毒は仕方ないですよね…。あくまで私の主観ですが、八戸の市街近郊で温泉を掛け流している宿泊施設は、なかなか見つけにくいかと思います(^_^;) 本八戸で良質な温泉が湧いてくれると嬉しいのですが、なかなか世の中は上手くいかないものですね。
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小杉さん、こんばんは。私はコスト面重視でスーパーホテルに泊まり、実際に浴場を利用する時点ではじめて、熊の沢温泉のお湯を運んでいることを知りました。施設の性質上、循環消毒は仕方ないですよね…。あくまで私の主観ですが、八戸の市街近郊で温泉を掛け流している宿泊施設は、なかなか見つけにくいかと思います(^_^;) 本八戸で良質な温泉が湧いてくれると嬉しいのですが、なかなか世の中は上手くいかないものですね。
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小杉さん、こんばんは。私はコスト面重視でスーパーホテルに泊まり、実際に浴場を利用する時点ではじめて、熊の沢温泉のお湯を運んでいることを知りました。施設の性質上、循環消毒は仕方ないですよね…。あくまで私の主観ですが、八戸の市街近郊で温泉を掛け流している宿泊施設は、なかなか見つけにくいかと思います(^_^;) 本八戸で良質な温泉が湧いてくれると嬉しいのですが、なかなか世の中は上手くいかないものですね。