須川高原温泉 その3 中浴場・霊泉の湯

岩手県

前回記事の続編です。

 
前回記事では大露天風呂「大日湯」を取り上げましたが、今回は館内にある中浴場「霊泉の湯」に入ります(館内にはこのほか大浴場「千人風呂」もありますが、そちらに関しては次回記事で取り上げます)。須川高原温泉のお風呂はどこでも霊泉の湯源泉を引いているのですが、この中浴場はその源泉名をそのまま浴場名にしているのですから、宿としてはこのお風呂に誇りを持っているに違いありませんし、マニア的としてもどんなお風呂なのか自分の目と体で確かめずにはいられません。
この中浴場は、私が泊まった湯治棟の廊下を進んだ先にありますので、まずは案内掲示に従って通路を進みます。

 
途中で何箇所か角を曲がりつつ奥へ奥へと歩いてゆくと・・・

 
廊下の手前側に男湯、奥に女湯の暖簾が掛かっていました。出入口の脇には、このお風呂は熱いので、熱いのが苦手な方は大浴場か露天を利用するように、と案内されています。この「熱い」というワードは、この中浴場が源泉名を名乗るに相応しいポイントであると、実際に湯船に入った後で気づくのですが、私が何を言いたいのかは後ほど触れます。
なお脱衣室にはロッカーが用意されていますので(100円有料)、貴重品を携行している場合も安心です。

 
 
まさに湯治宿といった風情が強い木造の浴室には、浴槽がひとつあるばかり。洗い場のカランも3基のみ(うち1基はシャワー)と、至ってシンプルです。浴槽内には耐酸性の塗装が施されており、塗装のエメラルドグリーンと壁の木材とのコントラストが鮮やかです。

 
壁には硫化水素対策と思しき通気口が2つあけられていました。湯船は(目測で)3.5m×2.5mほど。実際に湯船に入ってみますと、たしかに熱い。私の体感で45〜6℃はあるでしょうか。ただでさえヒリヒリと滲みる酸性のお湯なのに、その上に熱さが加わるのですから、湯船に脛を入れたときのピリピリ感には、熱いお風呂に慣れているはずの私でさえ、一瞬たじろいでしまいました。なるほど、これでは熱いお風呂が苦手な方は入れませんね。でもこのお風呂では熱さのほか、もう一つの点にも注目すべきだと私は思うのです。
湯船の画像をご覧ください。前回記事で取り上げた大露天風呂「大日湯」も、次回記事で取り上げる大浴場「千人風呂」も、いずれも湯船のお湯は白濁を呈しています。しかし、この中浴場では、同じお湯であるにもかかわらず底がはっきり見えるほどの透明度を有しているのです。そのかわり底には白い湯の花がたくさん沈殿しており(画像でも浴槽底面が部分的に白くなっているのがお分かりいただけるかと思います)、お湯を動かせばそれが舞い上がって一時的に白濁するものの、数分も経てば再び沈殿して元の透明度が蘇ります。お湯の濁りは圧力の変化や外気との接触、それに伴う酸化などの化学反応などによって変化によって発生するものであり、本来どの温泉も湧出時点では透明であることが多いことは、皆様ご存知通りです。この須川高原温泉においても、登山道脇の源泉で自噴した時には無色透明でしたが、引湯されて外気に触れたりする間に濁りが発生し、白濁の湯となったわけです。しかしながら、この中浴場においては濁りがほとんど発生しておらず、またお湯の熱さも維持されていることから、源泉で湧出した時に近い状態のお湯が提供されていると考えることができます。源泉からの引湯距離もさることながら、こぢんまりとした内湯である点も、白濁の程度を抑える要員になっているのかもしれません。つまり、この中浴場は霊泉の湯源泉のお湯本来の姿に最も近い状態で入れるお風呂と言えるのです。だからこそ、源泉名をそのまま浴場名にする資格があるのでしょう(以上、あくまで私の推論にすぎません)。

 
お湯の投入口は、板の上をお湯が流れてから浴槽へ落ちるような形状になっていました。熱すぎるお湯を自然冷却させるための工夫なのかもしれませんね。
熱いので長湯することはできず、烏の行水のような短時間入浴を繰り返すほかありませんでしたが、それでもお湯のコンディションが素晴らしかったため、私個人としては大変気に入りました。

次回記事では大浴場「千人風呂」を取り上げます。

次回記事に続く

コメント

  1. hiro より:

    最高ですね~
    中浴場の湯は感動的ですよね~。
    私が初めて泊まった3年前は、中浴場の屋根が雪で潰れてしまっていて閉鎖中でした。
    復活してから再訪したのですが、投入方が変わったせいか、幾分湯温が下がったような気がしましたが、気のせいですかね~(笑)。

  2. ぱと より:

    Unknown
    以前、此方に宿泊した時に従業員の方と雑談で内湯でプカプカ浮いて彼方に行く方が年間に何人かいると、霊感は無いので怖くは無いし逆に温泉好きとしては湯船で逝けるなんて羨ましい限りと話した記憶が有りました!東北廻り計画中です

  3. K-I より:

    まとめて返信させていただきます
    >hiroさん
    もちろん白濁のお湯も良いのですが、フレッシュさを感じるなら、hiroさんの仰るように中浴場のお湯が最高ですよね。お湯の良さに加えて湯治場風情もありますし。私が入った時にはしっかり熱く、はじめのうちは歯を食いしばってピリピリしたお湯に浸かりました(笑)。

    >ぱとさん
    >プカプカ
    たしかにあの熱さでしたらそんなことがあっても不思議ではありませんね。実際に彼岸へ旅立たれたご本人やご家族の方は気の毒ですが、私も温泉道楽冥利に尽きる逝き方だと思います。
    西日本の後は、東北ですか。素晴らしいです! 私はまだノープランですが、そろそろ考えた方が良いかな…。

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