前回記事に続いて東伊豆の温泉を巡ります。
伊豆急の普通列車に乗り、伊豆大川駅で下車。休日だというのに、この駅で降りたのは私を含め5人程度。しかも風貌から察するに地元の方ばかり。
駅前には足湯が設けられているのですが、私と一緒に下車したお客さんは誰も見向きをせず、足早に駅前から立ち去っていきました。東伊豆にしては珍しく観光色が薄い、とても鄙びた土地であることがわかります。
さて、駅前から伸びる坂道の細い路地を歩いてゆきます。のどかなあぜ道といった風情。実に良い雰囲気です。
細い路地を歩いて間もなく、今回の目的地である大川温泉「伊豆 AZUMA 東」に到着しました。以前は「伊豆大川温泉ホテル」というお宿でしたが、2018年7月にリニューアルしたと聞いたので、伺ってみることにしたのです。上述のような雰囲気の当地は、伊豆観光のメインストリームからちょっと外れていますので、そんな環境を寧ろ地の利と捉え、リニューアル後はお宿自ら「東伊豆の穴場温泉」と称しています。
リニューアルに伴い外観の塗装を変えた建物にお邪魔し、綺麗で明るいフロントで日帰り入浴をお願いしたところ、スタッフの方が快く受け入れてくださいました。
湯銭を支払い、エレベータで大浴場がある4階へ。なおフロントは2階ですので、お帰りの時は間違わないようご注意を。
脱衣室は畳敷きの14畳。浴室越しに視界が抜けており、外の景色が眺望できる明るい環境です。ロッカーは鍵つきですが、実際に施錠できるのは一部だけ。多くは鍵がついていませんでした。リニューアルの際に改修し忘れられちゃったのかな。室内には水分補給用の飲み水サービスが用意されているほか、濡れたタオルを入れるビニール袋も備え付けられていました。こうした細かな配慮は嬉しいですね。
湯の香が漂う内湯。床には伊豆青石が敷かれており、足裏から快適な感触が伝わってきます。内湯の右手には洗い場が配置され、シャワーつきカランが6個並んでいます。また画像には写っていませんが、左手前にはサウナも設置されています。
内湯の浴槽は石板タイル張りで、細長い台形の一部を欠けさせた形状をしています。やや浅めの造りかと思われます、
奥の湯口から温泉がしっかり投入されており、その湯口はオレンジ色に染まって、湯面ラインには同色のコブが線状に付着していました。お湯の濃さがビジュアル的に伝わってきますね。お湯は全量かけ流しており、浴槽の縁から溢れ出ています。なお湯温調整のため湯口において加水しているため、湯口では冷熱が分かれて感じられます。
浴槽のお湯はお湯はやや緑色掛かった笹濁り。塩化土類泉系のお湯によくある色合いや濁り方と言えるでしょう。
内湯のお湯は、縁からの溢れ出しの他、扉の下を介して露天の浴槽とつながっており、露天風呂にも流れてゆきます。
絶景露天風呂。
ビルの屋上に設けられ、大変広々しており、相模灘に浮かぶ伊豆大島を一望できます。もちろん周囲の山々も綺麗です。私が訪れたのは2018年の秋でしたが、常緑樹の中に紅葉が点在しており、また石垣の段々畑にはミカンが鈴なりでした。実に麗しい景色です。
相模灘を行き来する船舶はもちろん、伊豆大島は端から端までよく見え、元町港の様子もわかります。
露天の主浴槽はいわゆる岩風呂。上述したように内湯からお湯が流れ込んできますが、専用の投入口もあり、複数箇所からの投入により広い露天風呂の温度を均等にさせているようでした。この大きな露天風呂の中には岩が据えられ、そこに寄りかかってもいい感じで湯浴みできます。内湯よりもややぬるく、また内湯よりも濁りがやや強く、緑の他に金気色も混じる笹濁りを呈しています。
奥には寝湯のような浅い浴槽があり、ぬるいお湯が張られていました。この浴槽に入っちゃうと大島は見えませんが、空が大変広いので、日が沈んだ後には星空やお月様を仰ぎ見ながらのんびり湯浴みできることでしょう。私の利用時には青空高く流れる筋状の雲がとっても綺麗でしたよ。なお、その手前に設けられた小判形の焼き物の浴槽は水風呂です。
お湯に関するインプレッションですが、甘塩味、弱苦汁味、芒硝味、石膏味、弱い金気味、そしてわずかな収斂が感じられます。湯中ではツルスベに引っ掛かる浴感が拮抗し、しっとりと肌になじんでくれます。無色透明の硫酸塩泉や単純泉、そして食塩泉が多い伊豆半島にあって、この手の塩化土類泉的な濁り湯は大変珍しく、それだけでも入る価値があるかと思います。
建物の裏手には温泉櫓が立っています。ここからお湯を汲み上げているのですね。
なお一部の客室には露天風呂が付帯しており、上述した駅につながる路地を歩いていると、ベランダから湯気が上がっているのがわかります。なお大浴場のお湯は湯温調整のため加水していますが、客室のお湯は加水していないそうです(実際に宿泊した人の話による)。また今回取り上げた4階の大浴場の他、3階には貸切風呂もあるようです。
とにかく静かで麗しい環境に感動しました。なるほど穴場であることに間違いありません。次回は日帰りではなく宿泊して、じっくり堪能してみたいものです。
大川温泉 大川28号
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 76.9℃ pH8.2 155L/min(動力揚湯) 溶存物質2.980g/kg 成分総計3.029g/kg
Na+:717.0mg(71.54mval%), Mg++:6.4mg, Ca++:214.0mg(24.50mval%), Fe++:1.3mg,
Cl-:1027mg(66.34mval%), Br-:0.5mg, I-:0.2mg, SO4–:431.5mg(20.56mval%), HCO3-:348.7mg(13.08mval%),
H2SiO3:166.9mg, HBO2:20.3mg, CO2:48.8mg,
(平成30年1月10日)
伊豆急行・伊豆大川駅より徒歩1~2分
静岡県賀茂郡東伊豆町大川248-1
0557-22-0005
ホームページ
日帰り入浴15:00~20:00(念のため事前確認願います)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
コメント
Unknown
こんばんわ^^。
3月は我がホーム(非公認)である伊東ですね^^!
もちろん知っているホテルでしたがリニューアルしていたとは。
伊東付近は何処へ行ってものどかな風景が広がっていて、
食後にふらっと散歩するのがとても好きですね。
私も3月15日に母親を連れて伊東の八幡野に一泊していました。
「海が庭・みなとや」と言う宿です。15年来の常連です^^b
伊東の海は、他の海とは何故か少し違って見えて、
いつも懐かしい気持ちにさせられます。
いつ訪れても良い所ですよねぇ~。
Unknown
>ぬる湯マスターさん
いままで私は関心が東北や北海道、あるいは九州に向いていたのですが、最近は近場である伊豆を見直してみようと思い、少しずつですが出かけるようにしています。そんな中でこの記事に取り上げた大川にも行ってみました。おっしゃるようにこの界隈はのどかな景色で、とっても良いところですね。灯台下暗しと言ったら良いのか、遠くではなく近い温泉にも目を向けなければと考えを改めた次第です。
Unknown
すっかりご無沙汰しております…。
実はこの春に突然の大病に見舞われてしまい、未だに
温泉巡りが満足にできない状況なのですよ。
そんな中でも恋しいのは我が聖地である伊豆とその温泉。
あと少しだと耐える日々です。
この宿はいつも満室で宿泊できないため、やはり日帰り入浴で訪れるしかなさそうですね…。
Unknown
たちかわ某さん、ご無沙汰しております。
突然病に襲われたとのことで、大変驚いております。まだ温泉巡りが難しいようですが、今の様子はいかがでしょうか。おツライ気持ちをお察し申し上げます。温泉巡りは体力勝負ゆえ、無理すると宜しくありませんから、しっかり養生なさってから温泉をお楽しみいただければと思います。私も健康には気を付けなければ・・・。
やはりこちらのお宿は人気なんですね。上手い具合に空いているタイミングを狙って、いつか宿泊してみたいと思っています。
Unknown
お気遣いどうもです。
実は病とは声優の故・鶴ひろみさんの死因と同じ死病と言うべき厄介なもので…運良く命は拾えたものの、緊急手術により開胸のうえ心臓摘出、人工血管の移植と大掛かりな治療になりました。
手術そのものは成功で後遺症の心配も無いのですが…まだ体調・体力共に戻りません。
まさに人生一寸先は闇です。
そろそろ湯治目的で近場の温泉に行きたいのですが…確かに慎重にしなければですね。
Unknown
>たちかわ某さん
闘病中のご心労は想像を絶するものがあったかと思いますが、手術が成功して本当になによりです。
しばらくは辛抱の日々かと存じますが、しっかり乗り切ってまた温泉巡りができるよう、心よりお祈りしております。